私の母・智子(仮名)には、離れて暮らしていても長年交流を続けていた幼馴染がいました。ある日、いつものように電話がかかってきたのですが、なぜか昔贈ったものへの感謝を何度も伝えられて……?

それから、わずか1週間後のこと。加代さんが、突然の事故で亡くなったという知らせが届いたのです。あまりに急に訪れた別れに、私は大きなショックを受けました。

息子さんから聞いた話

それから葬儀などが落ち着いた頃、加代さんの息子さんと話す機会がありました。彼は「母は料理が大の苦手なのに、亡くなる前の日、急に揚げ物をたくさん作ったんです」と話します。続けて、「みんなで『おいしい、おいしい』って食べて……でも、なんで急に作ったんだろうって不思議で」と。

そしてふとした様子で、「なんとなく、分かってたのかなぁ……」とつぶやいたのです。その言葉を聞いた瞬間、私の頭にも一週間前の電話がよみがえりました。

今も心に残る「感謝してる」

昔贈ったポーチのことを突然持ち出し、何度も感謝を伝えてくれた加代さん。もちろん、突然の事故を加代さんが知っていたはずはありません。それでも亡くなる直前、家族には手料理を、私には感謝の言葉を届けてくれたことに、不思議なものを感じずにはいられませんでした。

偶然だったのかもしれない。だけど私には、加代さんが最後に大切な人たちへ自分の思いを残していったように感じられます。あの日伝えてくれた「感謝してる」という言葉は、寂しさとともに、今もあたたかな記憶として心に残っています。

【体験者:50代・専業主婦、回答時期:2026年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。

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