数分後、目の前が白くなった
ベンチに座って数分経ったころ、急に周囲の音が遠くなったように感じました。目の前も白くかすみ始め、「あれ?」と思ったところまでは覚えています。次に気づいたとき、私はベンチに横たわっていました。先ほどの女性が私の手を握りながら、救急車を呼んでくれていたのです。
救急隊員の方からは、脱水と空腹が重なり、血圧が下がった可能性があると聞きました。もしあのまま歩き続け、大通りを渡っていたら……そう考えると、あとから怖くなりました。
「どうして具合が悪いと分かったのですか?」と尋ねると、女性は「分からないの。ただ、あなたを見た瞬間、このまま行かせてはいけないと思った」と答えたのです。
見知らぬ女性が話してくれたこと
その女性には、私と同じ年頃の娘さんがいたそうです。数年前に亡くなり、この日は神社へお参りした帰りだったとのこと。私の姿が一瞬だけ娘さんと重なって見えて、考えるより先に声をかけていたと話してくれました。
そして「もしかすると、娘があなたを止めてくれたのかもしれないね」と少し寂しそうに笑ったのです。私は何度もお礼を伝え、女性と連絡先を交換しました。それ以来、京都を訪れると一緒にお茶を飲むことがあります。
なぜあの日、女性が私の異変に気づいたのか、今でも分かりません。ただ、理由をうまく説明できない直感が、誰かを助けることもあるのかもしれない。あの日に生まれた不思議な縁を、私は今も大切にしています。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2026年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐藤 栄祠
大手メーカーの営業を経て、ライターに転身。会社員時代に培った経験と、組織の一員であるからこその“喜怒哀楽”をリアルに伝え、「誰かを癒したい」との思いが執筆の原動力。スピリチュアル関連情報にも精通しており、それらに傾倒する人の思いを描いたエピソードも好評。
