店長のひと言で変わった空気
接客が終わる頃、店長が近くへ来て「真美さんは、お客様に合わせた提案が本当に上手なんです。新人教育も任せていますし、うちには欠かせない存在ですよ」と自然に話してくれました。
その言葉を聞いた由香さんは驚いたように目を見開き、頬を赤らめながら私に向き直りました。「この前はごめん。レジを打つだけなんて決めつけていた。短い時間でここまで相手のことを考えて提案しているなんて知らなかった」と、その場で素直に謝ってくれたのです。
胸の奥に引っかかっていたものが、少しずつほどけていくような気持ちになりました。
積み重ねた仕事は、ちゃんと誰かが見ている
後日、由香さんから「上司がとても喜んでくれた。本当にありがとう」とメッセージが届きました。それ以来、仕事や雇用形態を見下すような発言を耳にすることはなくなりました。
私は派手に言い返したわけでも、仕返しをしたわけでもありません。ただ、毎日の仕事を丁寧に積み重ねてきたことが、自然と自分の価値を証明してくれたのだと思います。
肩書きや雇用形態だけでは、その人の仕事の本当の価値は分かりません。目の前のお客様に誠実に向き合い続けた時間は、きちんと誰かが見ていてくれるものなのだと、あの日の出来事を通して実感しました。
【体験者:30代・主婦、回答時期:2026年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐藤 栄祠
大手メーカーの営業を経て、ライターに転身。会社員時代に培った経験と、組織の一員であるからこその“喜怒哀楽”をリアルに伝え、「誰かを癒したい」との思いが執筆の原動力。スピリチュアル関連情報にも精通しており、それらに傾倒する人の思いを描いたエピソードも好評。
