息子が語った理由
担任の先生は絵を描いている最中の息子に「この四角は何?」と聞いたそうです。すると息子は「スマホだよ。パパはいつもスマホの中にいるから」と笑顔で答えたといいます。その言葉を聞いた瞬間、私は夫と息子が一緒に過ごした時間より、画面越しに顔を合わせた時間のほうが多かったのかもしれないと思いました。
その日の夜、私は夫に保育参観で見た絵を見せ、担任の先生から聞いた話をそのまま伝えました。夫は何も言わずに絵を見つめ続け、やがて「俺、息子にとってスマホの中の人だったのか……」とつぶやくと、そのまま静かにうつむいたのです。
父親としての第一歩
翌朝、夫はいつもより早く起きると、会社へ「午前休をいただきます」と連絡していました。そして「今日は俺が送っていく」と言い、自分から息子の保育園の支度を始めたのです。久しぶりに息子と手をつなぎ、並んで歩いていく2人の後ろ姿を私は静かに見送っていました。
それから夫は仕事一辺倒だった生活を少しずつ見直し、できるだけ家族との時間を作るようになりました。あの日、息子が描いた一枚の絵は、父親として本当に大切なものは何かを夫自身に気づかせてくれたのかもしれません。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:逢坂 ゆな
ライター業をしながら、実は現役の保育士でもある。その実体験を元にしたエピソードをSNS発信すると好評を得て、執筆者としても活躍するように。幼稚園教諭や歯科受付などの、多彩な職業も経験。読者からの共感の声やお悩み相談、体験談が届き、それらも元に執筆中。育児エピソードや義母・夫とのバトルなど、ママ世代から共感を呼ぶリアルな体験記事が人気。
