私の料理を捨てる夫
「手抜きは家族への冒涜だ。一汁三菜を揃えるのが嫁のメソッドだろ」フルタイムで働く私に向かって、夫は平然と言い放ちます。
ある日、仕事で疲れ果て、せめて一品だけでもと買ってきたスーパーのコロッケ。夫はそれを見た瞬間、汚いものを見るかのような目で私を睨みつけました。そして、私が見ている前で、パックごとゴミ箱へ投げ捨てたのです。
「愛情がこもっていないエサなんて、俺の体には入れられない」私の努力も、食べ物の命も無下にする夫。自分の「手作り信仰」を絶対だと思い込み、他人の痛みを想像できない彼の態度に、私は毎日心を削られる思いでした。
しかし、そんな夫の傲慢な価値観が崩壊する日は、意外なかたちでやってきました。
夫の「手作りマウント」
夫婦で義実家へ帰省した際のことです。テーブルには、煮物に天ぷら、色鮮やかな和え物など、料亭のような豪華な和食がずらりと並んでいました。
夫は一口食べるなり、「やっぱり母さんの飯が世界一だよ! お前も見習えよ」と大絶賛。わざわざ私をチラチラ見ては、「手間暇かけた料理には、本物の愛が宿ってるんだよな。口に入れればすぐにわかるよ」と、勝ち誇った顔でマウントを取ってきました。
義母を「手作りの神様」のように崇め、私を「怠慢な嫁」として貶める夫の姿に、私は悔しさを通り越して呆れるばかりでした。ところが、夫が席を外した隙に、私は台所で衝撃の光景を目にしてしまったのです。
隠された「愛」の正体
片付けを手伝おうと台所へ向かった私が見たのは、義母が手際よく「デパ地下の高級惣菜店」の空パックをゴミ袋の奥へ押し込んでいる姿でした。大皿に盛られた豪華な料理の正体は、夫が「不潔で愛情がない」と切り捨てていた店の、一パック数千円もするお惣菜だったのです。
義母は慣れた手つきで、それらを重厚な陶器の皿に美しく盛り付けていただけでした。義母の「世界一の味」を支えていたのは、愛情という名の労働ではなく、単なる『盛り付けの技術』だったのです。
夫が戻ってきたタイミングで、私は満面の笑みでトドメを刺しました。
フリーズし、崩れ去った「手作り信仰」
「お義母さん、これ〇〇(デパ地下の名前)のお惣菜ですよね! お義母さんも愛用してるなんて、親近感がわいちゃいます。夫も『本物の愛は口に入れればわかる』って、このお惣菜を大絶賛してましたよ!」
その瞬間、夫は手に持っていたコップを落としそうなほどフリーズ。顔からはみるみる血の気が引いていきました。義母も「……バレちゃった? 働いてると大変だものねぇ」と苦笑いするしかありません。
自分がゴミ箱に捨てていたものと同じ「惣菜」を、世界一の愛情だと信じて崇めていた夫。自分の舌がいかにデタラメかを思い知った彼は、それ以来、食卓に惣菜が並んでも一切文句を言えなくなりました。
今では、私が買ってきた惣菜を、自ら進んで皿に盛り付けるようになっています。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:北山 奈緒
企業で経理・総務として勤務。育休をきっかけに、女性のライフステージと社会生活のバランスに興味関心を持ち、ライター活動を開始。スポーツ、育児、ライフスタイルが得意テーマ。

