突然の返金要求
ある日の午後、1通の社内メールが届きました。差出人は総務課長。「本日、お時間をいただけますか?」唐突な呼び出しに不安な気持ちで会議室に入ると、渋い顔の総務課長と給与計算担当の女性社員が並んで座っていました。
私が席に着くと、課長が急に笑顔になり、話し出します。「実は4年前から交通費を多く支払っていたことが分かりましてね」差し出された紙には「過去4年分の交通費過払い/差額:約198,000円」の文字。「来月の給与で相殺してもよいですよ」と……。全く想像もしていなかった展開でした。
まさかの逆切れ発言
4年前に引越しをした後も、なぜか以前の定期代がそのまま支給され続けていたというのです。先日、運賃改定があり、再申請したことで発覚したのでした。
「突然20万返金しろと言われても困ります」すると、課長から想定外の言葉が返って来たのです。「そう言われてもね……。確かにこちらのミスだけど、君も4年間、 本当に気づいていなかったの? 給与明細見てるでしょ」
まるで私が意図的に見て見ぬふりをしていたかのような言い方に衝撃を受けながらも、必死に反論。「まさかそんな間違いがあるとは思っていないので、細かく確認していませんでした。でも、気づかないふりなどしていません」話しは平行線のまま、その場は物別れに終わりました。
「報告義務はない」という宣告
何度か課長と話しをした後、結局、私は12回分割での返金に合意しました。ただ、同じことが繰り返されないよう再発防止策の策定を求めたところ、課長はこう断言。「それは当然こちらでやることなので、君に報告する必要はありませんよ」
私の所属する営業部門でミスが発生すると、徹底した原因究明と再発防止策の報告が求められています。管理する側とされる側の、あまりにも不公平なルール……。私はその日はじめて、社内ホットラインのフォームを開きました。
毎月の溜息と教訓
ホットラインには、部門によって異なる管理基準の不公平さと、根拠なく社員を疑うような課長の発言を書き込みました。ホットラインは社長直下で処理される仕組みです。しばらくして給与・交通費の管理手順が見直され、総務課長には厳重注意が下されたと聞きました。
私もそれ以来、毎月の給与明細を隅々まで確認するようになり、毎月差し引かれる16,500円を見るたびに、小さな溜息が出てしまいます。
誰にでもミスは起こり得るもの。だからこそ自分の身は自分で守る――その大切さを身をもって実感した大事件でした。
【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2024年11月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Sachiko.G
コールセンターやホテル、秘書、専門学校講師を歴任。いずれも多くの人と関わる仕事で、その際に出会った人や出来事を起点にライター活動をスタート。現在は働く人へのリサーチをメインフィールドに、働き方に関するコラムを執筆。

