ママ友付き合いのストレス
当時私は31歳で、双子の男の子を育てる専業主婦でした。仕事と育児の両立は、精神的にも体力的にも厳しく仕事を辞めて家庭に入りましたが、幼稚園のママ友付き合いが始まると、そこには新たなストレスが……。
グループのリーダー格である有美さんは私と同い年でしたが、ご主人は20歳近く年上で、大手メーカーの部長。彼女はことあるごとに、その圧倒的な「経済力」を私たちに見せつけてくるのです。
例えば、家族旅行の費用を安く抑える話をしていても、「今年はうちはハワイに行くの。主人にエコノミーは疲れるって言ったら、ビジネスクラスをとってくれたの」 30代前半のサラリーマン家庭の私たちが、必死に家計をやりくりしているのを承知の上で、彼女は贅沢な生活を隠そうともしませんでした。
プレッシャーでしかないランチのお誘い
週に1〜2回のランチも、たいてい有美さんからのお誘いです。いつもは幼稚園近くのファミレスやカフェが多いものの、時折こんな誘いが飛んできます。
「新しいフレンチを見つけたの。今度みんなで行きましょう! ランチなら5000円以下なの、お手頃でしょ」 断れば角が立つし、かといって高額なランチに付き合う余裕はありません。私にとって有美さんの誘いはプレッシャーでしかありませんでした。
ところが翌年、有美さんからの誘いが、ぱったりと途絶えたのです。 幼稚園で顔を合わせても、挨拶もそこそこに足早に帰ってしまう。社交的だった有美さんのあまりの変化に、ママたちは「体調が悪いのかしら? それとも何かあったのかしら?」と心配していました。
衝撃の事実
そんなある日、彼女と一番親しかったママ友から、衝撃的な話を聞きました。有美さんのご主人が「役職定年」を迎え、年収が大幅ダウンしたらしいというのです。私の主人の会社でも一定の年齢になると役職から退く制度がありますが、まだまだ先のことと、深く考えたこともありませんでした。
まだ子供も小さく、これから教育費がかさむ時期に、収入は減る一方だとしたら……。これまで生活レベルを最大限に上げ、贅沢を当然としてきた人にとって、あまりにも過酷な現実です。
消えたマウントの行方
それ以来、彼女がランチ会に姿を見せることもほとんどなくなりました。年の差婚をした時からわかりきっていたことと言えばそれまでですが、有美さんがぼんやりと予想していた現実が、彼女の予想より早く、現実的な「将来への焦燥感」へ変わったのでしょう。
子供が小学生になった頃、有美さんがパートで働いていると噂で聞きました。私は、年齢に伴って収入が変動するサラリーマンの悲哀と、将来設計の大切さを実感したのでした。
【体験者:30代・主婦、回答時期:2025年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Sachiko.G
コールセンターやホテル、秘書、専門学校講師を歴任。いずれも多くの人と関わる仕事で、その際に出会った人や出来事を起点にライター活動をスタート。現在は働く人へのリサーチをメインフィールドに、働き方に関するコラムを執筆。

