気づかれない朝の戦場
私は小学校の先生で、4歳の娘のママ。現在第二子を妊娠中です。朝の時間はいつも戦場でした。朝食作り、娘のお弁当、着替えに髪を結び、歯磨きを促し、保育園の準備、ついでに夕飯の下ごしらえまで、すべてを1人でこなしていました。
その間、夫はというと、自分の身支度を黙々と進めるだけ。家族のバタバタは、まるで自分とは関係のない出来事かのようでした。
届かないお願い
私は何度も「2人目が産まれたら、もっと大変になるから協力してほしい」と伝えましたが、夫は「仕事が忙しくて疲れている」を理由に動きませんでした。
そこで、仕事をしながら2人の育児と家事を1人でこなす大変さを想像し、自動調理鍋を購入しました。材料を切って入れておくだけで夕食が完成するものです。「これなら夫にもできる」と、少しの希望を込めていました。
すれ違う言葉
しかし、夫の反応は「そんな簡単なら2人目が産まれたあともカナにもできるね」と、まるで他人事。
その数日後、友人たちが家に集まったときも、自動調理鍋を見た友人の「これいいよね! パパにも夕飯の準備ができるね」という言葉に、夫は笑って「そんなに簡単なら余計カナに自分でやってほしいよね~」と返しました。その瞬間、部屋の空気がピタッと止まりました。
気づきの瞬間
そのとき、ひとりの友人が笑いながら言いました。「うんうん、わかった。じゃあさ、カナは夜ごはんやるから、あなたはお弁当と朝ごはん作って、子どもの着替えと保育園の準備して、洗濯して、送りまで全部やるってことでOKだよね? それ今カナが毎日やってるやつだから。簡単だからできるんだよね?」
声は明るいのに内容が鋭くて、それを聞いた夫は固まり視線を落としました。そして「……ごめん。なんでも一緒にやる。ほんとに。言ってほしい」と、小さな声で言いました。
夫にとって、やってもらうのが当たり前だった日常が、自分事へと変わった瞬間でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2023年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。

