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旅行会社に勤務していた頃は、深夜帰宅が続く日々。疲れと戦いながら働いていたある晩、突然体に異変が起こりました。多忙だった私が働き方を見直すきっかけとなった、ある夜のエピソードを紹介します。

深夜のバナナが招いた異変

旅行会社で働いていた当時、繁忙期ともなれば連日の深夜帰宅は当たり前でした。その日も帰宅は0時近く。食事をする気力もなく、「すぐに口に入れられるもの」と思い、テーブルに置かれていたバナナを食べました。

すると、食べ終えてまもなく顔が熱を帯びはじめ、鏡をのぞいた私は思わず声を上げました。唇やまぶた、頬がみるみる赤く腫れ、まるで別人のような顔に。手足に現れた発疹は、瞬く間に全身へと広がっていきました。呼吸も徐々に苦しくなり、私は慌てて家族を起こし人生で初めて救急車を呼びました。

救急車の中でかけられた言葉

すぐに到着した救急車に乗り込むと、医療機器が次々と装着され、救急隊員から矢継ぎ早に質問が飛んできました。「何を食べましたか?」「過去に同様の症状は?」「服用中の薬は?」――これまでアレルギー症状が出たことなどなく、自分に何が起きているのかもわかりませんでした。かゆみや苦しさよりも、得体の知れない不安の方が強く、私は激しく動揺していたのです。

受け入れ先の病院が決まり、救急車が出発。15分ほどの道のりが、ひどく長く感じられました。そんな時、「心配しなくて大丈夫ですよ」と救急隊員の方が声をかけてくれました。そのたった一言に、不思議と心が落ち着いたのを覚えています。プロとしての冷静さと、人としての温かさが同時に伝わってきたのです。

初めて知った「限界」

病院に着くと、すぐに点滴が始まり、やがて呼吸も肌の状態も落ち着きました。「明日も仕事なので帰ります」と言うと、担当医から「今夜はこのまま様子を見ます。軽く見てはダメですよ」とたしなめられ、一晩入院することに。

翌日退院し、後日受けた検査でも明確な原因は不明のまま。ただ、医師からは「疲労や睡眠不足、ストレスが引き金になることもある」と説明されました。

「忙しいのは当たり前」「自分だけは大丈夫」——そう思い込んでいた私は、初めて自分の限界を知り、働き方を見直す必要性を痛感しました。同時に、同じように無理を重ねている同僚たちの顔が浮かび、このままではいけないと強く焦りを感じたのです。

弱った時にしか見えないもの

早速上司に提案し、チーム全体で月間残業時間の「見える化」に取り組みました。週ごとの進捗を共有しながら業務の調整を行うのと並行し、会議の短縮や重複業務の削減を推進。あらゆる無理・無駄を見直した結果、残業時間は半減。深夜帰宅もほとんどなくなりました。何より集中力が戻り、日中の業務効率が格段に上がったのです。

あの夜の救急搬送は確かに怖い体験でしたが、体調を崩して初めて気づいた、「頑張る」ことと「無理をする」ことの違い。そして働き方を「設計」するという視点こそが、今も私の仕事の土台になっています。

【体験者:60代・女性会社員、回答時期:2025年10月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Sachiko.G 
コールセンターやホテル、秘書、専門学校講師を歴任。いずれも多くの人と関わる仕事で、その際に出会った人や出来事を起点にライター活動をスタート。現在は働く人へのリサーチをメインフィールドに、働き方に関するコラムを執筆。

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