問題だらけのチームを任されて
育休から復帰してしばらく経った頃、上司から「雰囲気を変えてほしいチームがある」と新たにリーダーを任されました。そこは40〜50代のパートさんから新入社員まで20人が所属するチーム。前任者も雰囲気づくりに苦戦していたそうです。
特に、リーダー格のパートさん・原さん(仮名・50代女性)は「私は20年ここで働いているんだから」が口癖。若手社員はプライドもあり「原さんはパートなのに」と反発し、しばしば衝突。前任者はその都度フォローしていましたが、根本的な解決には至っていませんでした。
家庭の食卓で生まれた気づき
そんなある日の夕食時、次女が野菜を嫌がり30分ダラダラ。ついに夫が強く叱りつけ、次女は大泣きして部屋にこもってしまいました。その様子を見ていた当時5歳の長女が口を開きました。
「パパの言うことが正しいのはわかるけど、怖い言い方したら悲しくなっちゃうかもよ。『怖い言い方しちゃってごめんね。次からは優しく言うね。どうしたら食べられる?』って言ったほうがいいよ」と。
子どもの言葉が教えてくれた大切なこと
その言葉を聞いた瞬間、私はハッとしました。まず相手の気持ちを受け止めること、間違っていたら素直に謝ること、そして相手が受け入れやすい言葉を選ぶこと――。それはまさに、職場でも必要なコミュニケーションの基本でした。
翌日すぐ後輩たちにそのエピソードを話し、原さんの気持ちを一度受け止めてほしいこと、言い方ひとつで印象が変わることを伝えました。
チームの空気が変わった瞬間
後輩たちは意識して接し方を変えてくれ、少しずつチームの空気が柔らかくなっていきました。原さんも「古いお客さんのことなら私に聞いてね!」と誇らしげに声をかけるようになり、以前のようなピリピリした雰囲気は消えていきました。
仕事と育児の両立は簡単ではありませんが、5歳の長女の一言が、20人の大人の心を動かした出来事でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2021年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。

