理不尽な日常
営業部署にいた頃、若手社員は私と1歳上の先輩だけでした。コピー用紙の補充から飲み会の幹事まで、いわゆる「誰もやりたがらない仕事」はすべて若手の私たちの担当。日々忙しい中での雑務はなかなか骨が折れましたが、「これも仕事のうち」と自分に言い聞かせながら、なんとかこなしていました。
地味に大変なお土産配り
なかでも厄介だったのが、出張帰りのお土産配りです。同じ部署にいる年配の社員たちは、なぜか毎回カステラや大きな和菓子など、切り分けて食べるタイプばかり買ってきていたのです。包丁もお皿もないオフィスでどうやってみんなで分けるか毎回頭を抱える羽目に。
「個包装だと助かるなぁ」と思いつつ、結局いつも私と先輩で、ラップやお皿類を買いに走ったりと忙しいなか対応していました。
シュトーレン事件発生!
そんなある年末、ひとりのおじさんが得意げに「これ、おいしいんだよ! みんなで分けて食べてね!」と大きなシュトーレンを差し出しました。繁忙期で余裕もなく、さすがにナイフもフォークもない中でどうしようもない私と先輩は顔を見合わせます。
「もう、これは2人で山分けするしかないね」と話し、少し申し訳なさもありましたが、ありがたく半分ずつ持ち帰りました。
意図せずに改善
翌週、おじさんが「どうだった? おいしかったでしょ?」と嬉しそうに聞いてきました。私は笑って、「はい! 先輩と2人で分けていただきました! おいしかったですー!」と返答。
決して皮肉ではなく、本当においしかった気持ちを伝えたかっただけなのですが、おじさんはハッとしたように一瞬止まり、「あ、確かに……会社じゃ切り分けられないもんな」と苦笑い。それ以来、お土産は自然とすべて個包装に変わりました。
小さなことですが、ありがたい変化が職場に起きた出来事でした。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2017年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。

