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私が学生時代、地下街のカフェで働いていたときの出来事です。新作のスイーツがランチメニューに加わったのですが、とあるお客様はそれがお気に召さなかった様子。ヒートアップした女性客の対応に当たったマネージャーも、ある事実を知って思わず顔色が変わり……?

突然のクレーム、その理由は……?

私が学生時代、地下街のカフェでアルバイトをしていた頃の話です。

ある日、ランチメニューのセットの新作スイーツとして「黒ごまプリン」がメニューに加わりました。健康志向のスイーツで、見た目も美味しそうで人気になりそうな予感。ところが、ある中年女性のお客様が注文後しばらくしてから、明らかに不満そうな顔でスタッフを呼び出しました。

「これ、黒くて縁起が悪いんだけど! なんでこんなもの出すの!?」あまりの剣幕に周囲の空気がピリつきます。スタッフが「ごまは栄養価も高くて……」と説明を試みても、「黒=不幸」「風水的に呪われる」とまったく聞く耳を持ちません。ついには「こんなもの出してたら、店が潰れるよ? お祓いした方がいい!」と強い口調で訴えてきました。

広がる波紋と、現場の緊張

お客様の声はどんどん大きくなり、まわりの席にも不穏な空気が伝わり始めました。さすがにこのままでは他のお客様にも影響が出ると判断し、マネージャーが対応に。丁寧に話を聞きつつ、お名前と過去のご来店情報を確認したマネージャーの表情が変わったのを、私は見逃しませんでした。

実はその女性、近隣の店舗でも「黒いスープは悪霊を呼ぶ!」と同様の主張でトラブルを起こし、すでに地下街コミュニティで有名になっていた人だったのです。

対応の裏にあった、静かな連携

マネージャーは冷静に「申し訳ありませんが、こちらではご対応できません」と伝え、女性にはご退店いただくことに。騒動はそれ以上広がることなく収束しました。

その後すぐに、本部と他店舗に情報を共有し、“今後の対応に注意が必要なお客様”としてリストに記載されることに。こうした静かな連携こそ、現場の混乱を最小限にとどめるための大事な仕組みなのだと実感しました。

思い込みは時に、誰かを困らせてしまう

今回のようなケースは、本人が強く信じているからこそ、こちらの説明をなかなか受け入れてもらえないことが多いもの。相手の言葉がどんなに非現実的に聞こえても、否定せず丁寧に対応する姿勢は必要。でも同時に、周囲を不安にさせるような行動はやはり困ってしまいます。

この経験を通して感じたのは、「いくら自分が信じていることでも、それを他人に押し付けると、結果的に周囲を困らせることがある」ということ。良かれと思っての言動でも、少しだけまわりへの影響を考える余裕を持ちたい……私もそう感じさせられた出来事でした。

【体験者:10代・飲食店、回答時期:2010年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Mio.T
ファッション専攻の後、アパレル接客の道へ。接客指導やメンターも行っていたアパレル時代の経験を、今度は同じように悩む誰かに届けたいとライターに転身。現在は育児と仕事を両立しながら、長年ファッション業界にいた自身のストーリーや、同年代の同業者、仕事と家庭の両立に頑張るママにインタビューしたエピソードを執筆する。

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