大人気商品
私がとあるテーマパークに行った時、さまざまな味のポップコーンがあちこちのワゴンで販売されているのを見かけました。どのポップコーンも人気のようで、いつも長い行列ができていました。
ポップコーンを片手に持ったお客さん
私もポップコーンを購入しようと思い、ワゴンの方へ向かいました。すると、ワゴンの横にベビーカーを片手で押して、もう片方の手でポップコーンが入った丸いケースを持った女性客がいることに気が付きました。
「家族でテーマパークって、やっぱり微笑ましいな」と思いながら通り過ぎようとした時、女性がベビーカーに乗っている赤ちゃんに話しかけようとした姿が横目に入りました。
その瞬間、女性はバランスを崩したのか、左手に持っていたポップコーンケースを地面に落としてしまったのです。
「きゃっ!」と女性の声が響くと同時に、落とした衝撃でケースの蓋が開き、中に入っていたポップコーンが半分以上地面に落ちてしまいました。
従業員の対応
女性客は悔しそうに地面のポップコーンを見つめると、近くにいたワゴンの従業員にこう言いました。
「ちょっと、あなた! ケースの形が悪いせいで、手が滑ってポップコーンが落ちちゃったじゃない! 責任とって新しい物と交換してよ!」
女性客は顔を真っ赤にしながら怒っていましたが、彼女が持っていたポップコーンケースは、滑り落ち防止にストラップも付いている物で、商品に不備があったとは考えにくい状況でした。
そのような中、従業員が「かしこまりました。ポップコーンの味と、差し支えなければお名前を教えていただけますか?」と優しく応えても、「キャラメルよ! まさか、また行列に並べなんて言わないでしょうね?」と強く言う女性客の怒りはおさまりません。
「従業員が悪いわけではないのに、こんなに怒られてかわいそう......」と私が思っていると、驚きの対応を耳にすることになりました。
「いえ、キャラメルポップコーンの販売場所にお名前を伝えておきます。並ばずに、横から従業員に声をかけてください。しかし、ほかに順番待ちをされているお客様もいらっしゃいます。そのため、恐れ入りますがこちらは今回のみの特別な対応となりますことをお含みおきください」と優しく小さな声で従業員は女性客に言ったのです。
そして、「お客様にとって、素敵な1日になりますように」と、そのテーマパーク限定のステッカーを女性客に渡しました。
自然と起こる拍手
近くにいたほかのお客さんから、「いくらなんでも、あんなに怒らなくてもいいのにね......」という声が聞こえると、女性客はそれに気づき、恥ずかしそうに「わかったわよ。騒いで悪かったわ。どうもありがとう」と言うとステッカーを受け取り、その場から足早に去って行きました。すると、一部始終を見ていた一部のお客さん達からその従業員に拍手と労いの言葉がかけられました。
女性客にも、そこまで怒ってしまう理由が何かあったのかもしれません。
しかし、急なお客さんのクレームにも関わらず、親切で丁寧な対応をした従業員に脱帽でした!
【体験者:20代・女性主婦、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐野陽菜里
大学卒業後、企業で管理職として活躍するも、妊娠出産を機に退職。育児しつつ、「自分の言葉で文章を書いて、発信したい」とライターに転身。接客業や恋愛のテーマを得意とし、日々インタビューをして情報を収集。