ホームセンターの日常
私はインテリア部門を担当していました。ですが、私の働くホームセンターでは、担当売り場以外の商品の知識や在庫の数などをお客さんに聞かれることが多々あるので、大忙し。さらに、土日や祝日には店舗が混雑することも多く、売り場担当者もレジに入ることがありました。
時間のかかる接客
日曜日の14時頃のことです。店舗が一番混雑し、案の定レジ応援がかかりました。私もレジに向かおうとすると、「この商品の売り場はどこにある?」と携帯の画面を見せながら近づいてくるお客さんに出くわします。
私は画面を確認し、「キッチン商品ですので、10の1番通路でございます」と伝えます。
すると、「色々聞きたいことがあるから一緒に来て欲しい」とお客さんは言うのでした。レジが人手不足とはいえ、目の前のお客さんを置き去りにはできません。私は売り場にご案内して、説明をし、その場を離れようとしました。
すると、「この商品をもっと欲しいから、他の店舗に在庫あるか調べてもらえる? できれば取りに行ける近くの店舗がいい」とお客さん。
私はすぐに在庫数を調べ、「現在のところ、近隣店舗に在庫はあるので、当店にお取り寄せ可能です。いかがいたしましょうか?」と聞くと、お客さんはすかさず「取り寄せて欲しい!」とのこと。結局、私はサービスカウンターで取り寄せの手続きまで行いました。
手続きも終えたところで、ようやく私はレジに入ることができました。
お礼と言ってくれるが……
有人レジ6個とセルフレジも全て埋まり、有人レジにはお会計を待っている人の列がずらりとできていました。急いでレジにつき、待っているお客さんを順に対応していきます。
少しずつ行列も減ってきたところ、次のお客さんに「いらっしゃいませ」と顔を上げて言うと、先程のお客さんが立っていました。日用品を数個選んでいたようです。通常通りレジ打ちをして「合計1290円でございます」と伝えると、そのお客さんは2000円を渡してきました。
「こちら710円のお返しと、レシートです。ありがとうございました」とにこやかに伝えます。
しかし、そのお客さんは手を引っ込めると「さっき沢山助けてもらったから、お釣りはいらないよ! 店員さんのお小遣いにでもしてね」と言うのです。
お気持ちは嬉しいけど……
喜んでもらえて嬉しい、という気持ちに包まれましたが、お金に関してはそのままもらうわけにはいきません。私の働くホームセンターでは、閉店後にレジに入っているお金を全て回収し、その日の売り上げの数値とレジから回収した現金が一致するかを機械が数えて、確認しています。
そのため、お金の過不足が発生すると大問題となってしまいます!
さらには、差額分を自分のポケットに入れるなんてことをしていたら、周りのお客さんや同僚に横領を疑われるかもとヒヤヒヤしてしまいます。
「お気持ちはとっても嬉しいのですが、規則でそういったことはお受けできないんです。でもお役に立てて良かったです。嬉しいです」とお伝えし、お釣りをお渡ししました。
そのお客さんは「そっか。ではまた違う商品を買いに来て、お店に貢献するね(笑)」と納得して帰って行ってくれました。
実は、たまにこういった「お釣りはいらないよ!」と言ってくれるお客さんがいらっしゃいます。ですが、時代も変わりこういったお金はもらいにくい環境だったり、禁止されているお店もあるはず。
嬉しい気持ちがある反面、お釣りを受け取ってもらえなかったらどうしよう、と少し焦る瞬間でもあります。
そんな経験をした私のおすすめは、「お客様の声」などアンケートでその店員さんを褒めること。
これなら、誰も困ることなく、感謝の気持ちを行動で店員さんに伝えられるかなと思います。お試しを!
【体験者:20代・女性主婦、回答時期:2020年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐野陽菜里
大学卒業後、企業で管理職として活躍するも、妊娠出産を機に退職。育児しつつ、「自分の言葉で文章を書いて、発信したい」とライターに転身。接客業や恋愛のテーマを得意とし、日々インタビューをして情報を収集。