転勤先の店舗
あれは、私がホームセンターで働き出して2年経ったときのこと。私が勤めるホームセンターでは、転勤が多く、正社員は近隣の店舗をぐるぐるとまわっていました。
しかし、配属される店舗には気心の知れた同期社員や性格があいそうな社員がいるかを考慮してくれていたので、みんなすぐに打ち解けることができていました。
また、ホームセンターという仕事柄、正社員だけでなく学生のアルバイトさんや子育てをしながらのパートの方もいるので、幅広い年代の方と関わることができる環境でした。
私の店舗では、私より年上の社員が多く、同年代の社員はほとんどいませんでした。
唯一、私と同期である男性社員Aがいて、すぐに仲良くなりました。Aと私は、退勤時間が重なれば、店舗近くにある居酒屋に行くことが多々ありました。
実は聞かれてる!?
そんなある日のことです。私がバックヤードで一人作業をしていると、商品が入った段ボールを持ったAが現れました。
私は、「今日、退勤時間重なるからさ、また一杯飲んで帰らない?」とAに聞きました。
すると、Aは「ごめん、今日は厳しいかも」と言うのです。
私が誘うと、いつもなら「行こう行こう!」とノリノリで答えるので、断るなんて珍しいなと思いました。
そして、Aは段ボールが積み重なったバックヤードをキョロキョロを見渡して、誰もいないことを確認してから私に言いました。
「実は今日、サービスカウンターの女性B子さんが家に来るんだ」と。
すかさず私は「あれ? B子さんって既婚者でお子さんもいなかった?」と驚いてAに聞きました。
Aは「そうなんだけど、数ヶ月前にB子の相談に乗ってから、不倫関係なんだよね」と気まずそうに私に告白しました。
「ちょっと! それヤバくない!?」と私は慌ててAを問い詰めます。
するとAは、「でも、この会社は半年くらいで転勤あるし、その間だけならバレないでしょ! お前にしか言ってないから、広まらないだろうし」とAは自信満々に言うのでした。
秘密をばらさずにいたけど……?
いい大人のAとB子なので、私が無理矢理にでも割って入るのもおかしいかと思い「良くないと思うけどな……」と釘を刺すだけに留めておきました。
私は誰にも言うつもりはありませんでした。しかし、実はこの時、別の従業員が商品が入った段ボールの山に隠れて、バックヤードにいたのでした。
そんなことに気がつかない私とAは、その後それぞれ退勤していきました。
不倫の末路
そして次の日、何事もなかったように出社するA。しかし、店舗の空気がおかしいことに気がつきます。
そう、別の従業員が不倫の全てを店長に報告したらしく、噂は瞬く間にホームセンター中に広がっていたのです。
すぐに店長に呼び出され、Aは左遷となりました。B子はいたたまれなくなったのか退職していきました。
初めは私が秘密を言いふらしたのではないかと、疑っていたAですが、どうやら段ボールの影に他の社員がいたと知ったようで、私が責められることはありませんでした。
仲の良かった同期だったので、一体自分はどうすれば良かったのかと考えてしまいました。
壁に耳あり、障子に目あり。自分の行動には責任を持ち、十分気をつけたいと思うのでした。
【体験者:20代・女性主婦、回答時期:2019年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐野陽菜里
大学卒業後、企業で管理職として活躍するも、妊娠出産を機に退職。育児しつつ、「自分の言葉で文章を書いて、発信したい」とライターに転身。接客業や恋愛のテーマを得意とし、日々インタビューをして情報を収集。