夫の口癖
共働きの私は、仕事から帰ると休む間もなく台所に立ち、毎日夕食を作っていました。帰宅する時間は夫とほとんど変わらないのに、夕食の支度はいつの間にか私の役目になっていたのです。
冷蔵庫の中身や栄養のことを考えると、何を作るか決めるだけでも一苦労。夫に献立の相談をしてみても、夫の答えは、いつも「簡単なやつでいいよ」「なんでもいいよ」ばかり。どれだけ聞いても、それ以上の言葉が返ってくることはありませんでした。
「言葉どおり」の夕食
そんなある夜、いつも通りリクエストを聞くと、夫はまた「簡単なやつでいい」と答えます。それならと、私はその言葉どおりに卵かけご飯と味噌汁だけを食卓に並べてみました。夫が望んでいた「簡単なやつ」を、そのまま形にしたのです。
ところが席に着いた夫は、箸を持とうともしません。食卓をじっと見つめたまま「え、今日これだけ?」と不満そうな顔を見せたのです。
夫の言い分
「簡単なやつでいいって言ったよね?」と返すと、夫は「そうだけど、これは手抜きすぎん?」と笑います。
夫にとっては、軽い冗談のつもりだったのかもしれません。それでも夫の一言に思わずカチンときてしまいました。そこで私はすかさず「じゃあ、その“手抜きじゃない簡単なやつ”のレシピ教えて」と尋ねたのです。
答えられない夫
当然、夫は何も答えられるはずもなくそのまま黙ってしまいました。そして「ごめん……」と呟きながら黙って卵かけご飯を食べ始めたのです。
言うのは簡単でも、作る側にとってはそれが逆に負担になることもあるのです。夫もそれを自覚したのか、その日以来、私がご飯を作っていると「何か手伝おうか?」とそばに寄ってくるようになりました。今では台所に2人で並ぶ日も、少しずつ増えています。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:逢坂 ゆな
ライター業をしながら、実は現役の保育士でもある。その実体験を元にしたエピソードをSNS発信すると好評を得て、執筆者としても活躍するように。幼稚園教諭や歯科受付などの、多彩な職業も経験。読者からの共感の声やお悩み相談、体験談が届き、それらも元に執筆中。育児エピソードや義母・夫とのバトルなど、ママ世代から共感を呼ぶリアルな体験記事が人気。

