「私がやったほうが手っ取り早いから」
私の住む地域では、毎年秋に自治会主催のお祭りがあります。その準備中、自治会長の妻である恵子さんが「こういうのは慣れてる人がやらないと」「私がやったほうが早いから」と、何でも仕切るようになりました。
私が「受付は去年と同じ場所でいいですよね?」と確認すると、「そこだと人が流れないの。こういうの、やったことないでしょ?」と鼻で笑われてしまいました。
ほかの人が意見を出しても「大丈夫、私に任せて」と聞こうとしません。次第に、みんな何も言わなくなっていきました。
祭り3日前、届くはずの備品がない
恵子さんは会場の配置から備品の発注まで、ほとんど1人で決めていました。ところがお祭りまであと3日という日、届く予定だったテーブルや椅子が来ません。「今日届くはずですよね?」と確認しても、恵子さんは「ちょっと遅れてるだけじゃない?」と余裕の表情。
しかし時間が過ぎてもトラックは来ず、さすがにみんながざわつき始めました。慌てて業者に確認すると、返ってきたのは耳を疑うような答え。なんと、正式な注文自体が入っていなかったのです。
恵子さんは見積もりを取っただけで、発注したつもりになっていました。それでも「業者の確認不足じゃない?」と言い出したため、周囲の空気が一気に重くなりました。
夫がメールを確認して発覚した事実
そこへ自治会長である恵子さんの夫がやってきました。事情を聞くと、すぐに業者とのメールを確認。そして画面を見ながら「注文します、という返信をしてないじゃないか」と指摘したのです。
恵子さんは「でも普通、分かるでしょ?」と反論しましたが、夫は「分かるわけないだろ。みんなの意見を聞かずに自分でやると言ったんだから、まず謝りなさい」と注意。さらに「雅恵さんたちは何度も確認しようとしてくれていた。それを断ったのは君だろ」と言われると、恵子さんは何も言えなくなりました。
その後少しの沈黙のあと、「私の確認不足でした。ごめんなさい」とみんなに頭を下げました。
全員で動いて迎えたお祭り当日
もう時間がありません。全員で手分けして別の業者や自治会館の備品を確認し、何とか必要な数をそろえることができました。お祭り当日は大きな混乱もなく無事終了。
恵子さんも以前のように1人で仕切ろうとはせず、「これ、どうしたらいいと思う?」と周囲に聞くようになりました。私にも「この前は言い方も悪かった。ごめん」と改めて謝ってくれました。
自信があることと、周囲の意見を聞かないことは別物です。失敗は大変でしたが、それをきっかけに恵子さんの態度も変わり、みんなで協力する大切さを実感した出来事でした。
【体験者:40代・主婦、回答時期:2026年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐藤 栄祠
大手メーカーの営業を経て、ライターに転身。会社員時代に培った経験と、組織の一員であるからこその“喜怒哀楽”をリアルに伝え、「誰かを癒したい」との思いが執筆の原動力。スピリチュアル関連情報にも精通しており、それらに傾倒する人の思いを描いたエピソードも好評。

