友人から聞いたお話です。市役所を定年退職し、穏やかな毎日を送っていた友人の叔母が紹介された一匹の高齢犬。看取ってあげられるかもしれないと覚悟を決めた叔母と犬が過ごした日々。そして年月が流れ、叔母が人生の最期を迎えようとしていたとき、不思議な出来事が起こったそうです。
最後も、いつものように顎を乗せて
そして、とうとう別れの日がやってきました。すっかり弱ったハナは、叔母の手にそっと顎を乗せました。それは、甘えたいときに叔母に何度も見せていた、いつもの仕草。「大丈夫だよ。ずっとここにいるからね」「最後の飼い主になる」と決めて迎えた叔母。その約束どおり、ハナの最期を見届けました。
それから長い年月が流れ、今度は叔母自身が病院のベッドで過ごすようになりました。
「私も、そろそろかしらね」
意識が遠のく時間が増えていたある日、叔母は家族にぽつりと話しました。「今日ね、あの子がお見舞いに来てくれたの」と。「あの子」とは、ずっと昔に看取ったハナのことでした。そしてほどなくして、叔母も旅立ちました。
叔母が最期に何を見たのか、本当のことは分かりません。ただ、「最後の飼い主になる」と覚悟を決めた叔母を、ハナもずっと覚えていたのではないかと思うのです。今ごろ二人で、またいろいろな景色を見ながら旅をしているような気がしています。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:島田歩実
元銀行員として、女性のキャリアやお金にまつわるあれこれを執筆中。アメリカへの留学経験もあり、そこで日本社会を外から観察できたこともライターとしての糧となる。現在はSNSなどを介してユーザーと繋がり、現代女性の声を収集中。
