恐る恐る食べてみると予想外の味
やがて食卓にカレーが運ばれてきました。見た目はいつものカレーとほとんど変わりません。香りを確かめてみても、心配していた塩辛特有のにおいは感じませんでした。それでも私は、口に入れた瞬間にイカの塩辛の味がするのではないかと警戒しながら、恐る恐るひと口。
ところが、想像していた生臭さはほとんどありません。それどころか、いつものカレーよりコクがあるように感じます。飲み込んだ後にも、じわっと旨みが残りました。「あれ?」と思ってもうひと口。やっぱりおいしいのです。
思わず「悔しいけど……これ、おいしい」と言うと、夫は得意げな顔で「だろ?」とひと言。「絶対失敗すると思ってた。塩辛ってこんな使い方できるの?」と言いながら、気づけばどんどん食べ進めていました。
今では私から「あのカレーにする?」
夫によると、ポイントは塩辛をたくさん入れず、隠し味になる程度の量にすることなのだとか。魚介の旨みや塩気がカレーの中に溶け込むことで、味に深みが出るそうです。そんな説明を聞きながら食べているうちに、私はいつもより多めにご飯をよそって、おかわりまでしてしまいました。
すると夫から「さっき夕飯の心配してなかった?」と笑われ、「それはそれ、これはこれ」と返すしかありませんでした。それ以来、冷蔵庫に塩辛が少し余っていると、私のほうから「今度また、あのカレーにする?」と夫に頼むこともあります。
最初は絶対に合わないと思っていたカレーと塩辛。でも、実際に食べてみなければ分からないものですね。食材の組み合わせも、イメージだけで決めつけず試してみると、思いがけないおいしさに出会えることがあるのだと感じました。
【体験者:39歳・主婦、回答時期:2026年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐藤 栄祠
大手メーカーの営業を経て、ライターに転身。会社員時代に培った経験と、組織の一員であるからこその“喜怒哀楽”をリアルに伝え、「誰かを癒したい」との思いが執筆の原動力。スピリチュアル関連情報にも精通しており、それらに傾倒する人の思いを描いたエピソードも好評。
