これは、私が先日体験した出来事です。久しぶりに友人と飲みに行った帰りの電車で、隣に座っていた大学生と思われる女性に、酔った男性が「笑顔がないね〜。愛想悪いよ」と絡み始めました。思わず身構えてしまいましたが、絡まれた女性が返したのは、思いもよらないひと言だったのです。

営業スマイルの値段

ところが、絡まれている本人は少しも困った様子を見せません。男性の声が続くなか、女性はスマホから顔も上げずに「営業スマイルは時給が発生してる時しかしないんで」とひと言。

何を言われたのか理解できなかったのでしょう。男性は「は?」と口を開けたまま固まってしまいました。静まり返っていた車内から、こらえきれないといった様子の笑いが漏れます。私も思わず口元に手をやったほどです。

有料になったスマイル

笑われた男性は、それ以上何も言えなくなったようでした。ばつが悪そうに立ち上がると、次の駅が来るのを待ちかねたようにホームへ降りていったのです。扉が閉まると、車内にはいつもの静けさが戻りました。

隣の女性は何事もなかったように画面へ視線を戻しています。誰かに助けを求めるでもなく、たったひと言で場を収めてしまったその落ち着きぶりに、私はただ感心するばかりでした。

そしてその横顔を見ながら、昔ハンバーガーのチェーン店で「スマイル0円」が注文できた時代のことをふと思い出していました。しかしどうやら、令和のスマイルは有料になったようです。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:逢坂 ゆな
ライター業をしながら、実は現役の保育士でもある。その実体験を元にしたエピソードをSNS発信すると好評を得て、執筆者としても活躍するように。幼稚園教諭や歯科受付などの、多彩な職業も経験。読者からの共感の声やお悩み相談、体験談が届き、それらも元に執筆中。育児エピソードや義母・夫とのバトルなど、ママ世代から共感を呼ぶリアルな体験記事が人気。

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