黙っていた義母が放った一言
すると、それまで黙っていた義母が「そんな決まり、うちには一度もないけど」ときっぱり。義父も「お前は子どもの頃から食事を運んでもらっていただけだろ。それを家の伝統にするな」と続けました。
さらに義母はエプロンを義兄の前に置き、「そこまでうちのやり方に詳しいなら、残りの料理と洗い物はあなたに任せるわ」と一言。義兄は「俺は客だぞ!」と怒りましたが、義母は動じません。「手土産も持たず、毎年世話になるだけの人を客とは呼ばない」と冷静に返したのです。
私は思わず義母の顔を見てしまいました。
私も初めて自分の気持ちを伝えた
夫も「兄さんが美紀に命令するのを、もう黙って見ていられない。次に同じことを言ったら、俺たちは帰る」と言ってくれました。味方になってくれる人がいると分かり、私もようやく「私も家族として来ています。お手伝いをする人として呼ばれるなら、来年からは遠慮します」と伝えることができました。
義兄は不満そうにエプロンを手に取り、慣れない皿洗いに悪戦苦闘。それでも最後まで誰も代わりませんでした。翌年から義兄は以前のように偉そうに指図しなくなり、少なくとも自分が使った食器は片づけるようになりました。
「昔からの風習」と言えば何でも許されるわけではありません。あの日の義母の一言が、ずっと我慢していた私の背中を押してくれました。
【体験者:30代・主婦、回答時期:2026年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐藤 栄祠
大手メーカーの営業を経て、ライターに転身。会社員時代に培った経験と、組織の一員であるからこその“喜怒哀楽”をリアルに伝え、「誰かを癒したい」との思いが執筆の原動力。スピリチュアル関連情報にも精通しており、それらに傾倒する人の思いを描いたエピソードも好評。
