私が「薬をお渡ししないと、薬を飲んで病気の治療ができないですよ」と言うと、佐藤さんは少しムッとしながら反論してきました。「薬関係の書類があれば、病気だから治療しているって証明できますよね。薬の本体はかさばるから要りません。でも飲んでいる証拠が欲しいんです」
何のための薬なのか
私は何となく嫌な予感がして「もしかして、今までお渡しした薬も飲んでいませんでしたか」と尋ねました。すると佐藤さんは「1回も飲んでないです。だって副作用が怖いし」と悪びれずに答えたのです。
それを聞いた私は驚きながらも、冷静にお伝えしました。「確かに薬は、病気だから飲むんです。でも病気の証明として使うのではなく、あなたの症状をよくするために使われるものです」
目的と手段を取り違えないで
そして私は「薬の副作用など気になることは、気軽に相談してくださいね」と伝え、経緯を病院へ報告。家に残っている薬から飲んでもらうことになりました。
その後、佐藤さんは病院で診断書を書いてもらい、職場へ提出。やっと病気を理解してもらい、仕事に行きながら治療を続けているようです。
佐藤さんは、薬を飲むことの目的と手段が逆転していました。みんな様々な事情を抱えているため、個人に合わせた寄り添い方が必要だと気付かされた出来事でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:伊村 えりか
薬剤師歴12年。就業を通じて多くの人生や、悩み、奇跡などに直面し、それらを伝えるべく執筆活動を開始。職場や同世代の女性との会話をもとに、医療現場の裏側から家族の「あるある」まで、多岐にわたるテーマで執筆を手がける。子育て
サイトのアンバサダーを務め、身近な視点を活かしたコラムを執筆中。
