過去の経験が会社を救った
その様子を見て、私は思い切って声を掛けました。「以前お世話になった工芸社なら、対応できるかもしれません」実は私は、この会社へ来る前、展示会やイベント装飾を手掛ける工芸社で働いていました。家庭の事情で派遣という働き方を選んだだけで、展示会の現場経験は長かったのです。
急いで担当者へ連絡すると、「舞子さんのお願いなら協力します」と快く引き受けてくださいました。資材は翌日に無事到着し、展示会は予定どおり開催。完成したブースは取引先からも「完成度が高い展示ですね」と評価され、大きなトラブルになることなく終えることができました。
肩書きではなく、経験に耳を傾ける職場へ
展示会後、部長から経緯を聞かれ、私が以前は展示会の現場を担当していたことや、派遣という働き方を選んだ理由を初めて話しました。するとMさんは、「派遣社員だからと決めつけて、話を聞かなかった私が悪かったです」と頭を下げてくれました。
部長も「立場ではなく、現場で気付いた声を大切にしなければいけない」と部署全体へ伝え、それ以来、派遣社員も準備会議へ参加するようになりました。私の意見も自然と求められるようになり、職場の雰囲気も少しずつ変わっていったのです。
肩書きだけでは、その人が積み重ねてきた経験までは見えません。だからこそ、一人ひとりの声に耳を傾けられる職場であってほしい……私は今でもそう願っています。
【体験者:30代・派遣社員、回答時期:2026年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐藤 栄祠
大手メーカーの営業を経て、ライターに転身。会社員時代に培った経験と、組織の一員であるからこその“喜怒哀楽”をリアルに伝え、「誰かを癒したい」との思いが執筆の原動力。スピリチュアル関連情報にも精通しており、それらに傾倒する人の思いを描いたエピソードも好評。
