見ていてくれた人
数日後、私は思いがけない話を耳にしました。あの日、私へ嫌味を言った同僚が、その年に予定されていたチームリーダー候補から外されたというのです。どうしてそんなことになったのだろうと驚いていると、別の同僚が静かに教えてくれました。「あの日の発言はあまりにもひどかったから、上司へ報告したんだ」
実はその同僚は以前から、「どうせまた子供を理由に休むでしょ」「子供がいる人と同じチームは損」と、私がいないところでも繰り返し陰口を言っていたそうです。
その報告を受けた上司は本人へ聞き取りを行い、「育児を理由にした嫌がらせは職場では許されない」と厳しく注意しました。しかし本人は、「冗談のつもりだった」と弁解したものの、その言い訳が受け入れられることはありませんでした。
一人の勇気が職場を変えた
その後、同僚はチームリーダー候補から外されただけではなく、人事評価でも協調性について指導を受けることになりました。それ以来、その同僚が私へ嫌味を言うことはなくなり、職場の雰囲気も少しずつ落ち着きを取り戻しました。
何より救われたのは、見て見ぬふりをせず、勇気を出して上司へ伝えてくれた同僚がいたことです。もし誰も声を上げてくれなければ、私は本当に退職していたかもしれません。
今でも「また子供の熱? 本当なの?」というあの一言だけは忘れられません。働く親にとって本当につらいのは、子供の急な体調不良だけではありません。事情を知らないまま向けられる心ない言葉は、ときに仕事を続ける気持ちまで奪ってしまいます。
あの出来事を振り返るたび、人を傷つけるのは大きな出来事ではなく、何気なく口にした一言なのだと、今でも強く感じています。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐藤 栄祠
大手メーカーの営業を経て、ライターに転身。会社員時代に培った経験と、組織の一員であるからこその“喜怒哀楽”をリアルに伝え、「誰かを癒したい」との思いが執筆の原動力。スピリチュアル関連情報にも精通しており、それらに傾倒する人の思いを描いたエピソードも好評。
