防犯カメラに映っていた光景
管理会社が防犯カメラを確認すると、私の予感は外れていませんでした。映像には、向かいの女性が私の郵便受けを何度ものぞき込み、不在票や会社から届いた郵便物を確認している姿が映っていたのです。
事情を聞かれた女性は悪びれる様子もなく、「隣なんだから、そのくらい普通でしょ? 心配してあげてたのに」と言い切りました。謝罪の言葉は最後までありませんでした。その何気ない口調が、かえって背筋を冷たくしたのを今でも覚えています。
静かな人ほど怖い
管理会社は女性を厳重注意し、私はポストの暗証番号と鍵を変更しました。その後、その女性は別の住人ともトラブルを起こしていたことが分かり、最終的にはマンションを退去したそうです。
大きな声で怒鳴られたわけでも、直接脅されたわけでもありません。それでも一番怖かったのは、ごく普通の表情で他人の生活をのぞき見し、それを悪いことだと思っていなかったことでした。
あの出来事以来、私は郵便受けを確認するとき、ほんの少しだけ周囲を見る癖がついています。何気ない日常は、思っている以上に個人情報の集まりなのだと、この出来事が教えてくれました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐藤 栄祠
大手メーカーの営業を経て、ライターに転身。会社員時代に培った経験と、組織の一員であるからこその“喜怒哀楽”をリアルに伝え、「誰かを癒したい」との思いが執筆の原動力。スピリチュアル関連情報にも精通しており、それらに傾倒する人の思いを描いたエピソードも好評。
