上司が返した意外な言葉
朝の業務が始まって間もなく、例の先輩が再び口を開きました。「いいなあ、子どもを理由に休めて」その場の空気が一瞬止まったのを覚えています。すると、普段は穏やかな上司が静かな口調で言いました。「理由にしているんじゃなくて、必要だから帰っているんです」
さらに上司は続けました。「昨日の資料、晶子さんは対応してくれています。確認しましたか?」先輩は慌ててパソコンを開きました。「あ……届いてました」
そう小さく答えた先輩を見ながら、私は何も言えませんでした。ただ、自分の状況を理解してくれる人がいることに救われた気持ちになりました。
支え合える職場に
しばらくして、その先輩が体調不良で急に休むことがありました。私は特別なことは考えず、担当業務の一部を引き受けました。数日後に復帰した先輩は、少し気まずそうな表情でこう言いました。「この前はごめん。助かった」私は「誰でも急に抜けることはありますよね」とだけ返しました。
その後、部署では早退や休暇が発生した際の共有ルールが見直されました。誰か1人に負担が集中しないよう、業務を分担できる仕組みも整えられたのです。
私は後になって、「子育てが大変」というよりも、「申し訳ないと思い続けること」が一番つらかったのだと感じました。誰にでも予期せぬ事情はあります。だからこそ大切なのは、誰かを責めることではなく、お互いに支え合える環境をつくることなのかもしれません。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐藤 栄祠
大手メーカーの営業を経て、ライターに転身。会社員時代に培った経験と、組織の一員であるからこその“喜怒哀楽”をリアルに伝え、「誰かを癒したい」との思いが執筆の原動力。スピリチュアル関連情報にも精通しており、それらに傾倒する人の思いを描いたエピソードも好評。
