心ない一言に傷ついた日
数年前、私はなかなか子どもを授かることができず、夫と相談して不妊治療を始めました。しかし、通院や検査を重ねてもなかなか結果につながらず、先の見えない日々が続いていたのです。
ある日、通院のための有給申請をして席に戻ると、同僚の鈴木さん(仮名)が「自然に授かれないなんて可哀想」とぽつりと言いました。思わず顔を上げると、彼女は「私だったらそこまでして子ども欲しいと思わないかも」と続けたのです。
笑顔で飲み込んだ悔しさ
鈴木さんの言葉に何か返そうと思ったものの、うまく言葉が出てきませんでした。周囲を見渡すと、パソコンの画面に視線を落とす人や、気まずそうに書類へ目を向ける人ばかり。私は「そうですよね」と曖昧に笑い、その場をやり過ごしました。
けれど帰宅後、一人になるとあの会話を思い出していました。治療のたびに期待しては落ち込み、夫と励まし合いながら前を向こうとしている毎日なのに……それでも「我が子に会いたい」その一心で、私は次の診察日に向けて再び前を向いたのです。
突然届いた連絡
その後も治療を続けた結果、私は念願だった第一子を授かることができました。出産後は慌ただしい毎日でしたが、子どもの成長を見守りながら穏やかな日々を過ごしていたのです。
そんなある日、突然鈴木さんからLINEが届きました。久しぶりの連絡に驚きながら内容を確認すると、そこには「よかったら通っていた不妊のクリニックを教えてほしい」というメッセージが。聞けば、鈴木さんは二人目不妊に悩み、治療を始めることになったというのです。
ようやく報われた気持ち
鈴木さんのLINEには「あの時は無神経なことを言ってごめん。自分が同じ立場になって初めて分かった」と続けてありました。私は通っていたクリニックの情報や治療中の経験を伝えて「お互いうまくいくといいね」とだけ、返信しました。
その夜、眠る我が子の顔を見ながら、あの日のことを思い返していました。あの時職場で飲み込んだ言葉、悔しかった思い……でも鈴木さんを責めたい気持ちは不思議とありませんでした。ただ、不妊治療を続けると決めたことも、何を言われても諦めなかったことも、間違いではなかったのだと思えて、その日はいつもよりぐっすり眠れたのです。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:逢坂 ゆな
ライター業をしながら、実は現役の保育士でもある。その実体験を元にしたエピソードをSNS発信すると好評を得て、執筆者としても活躍するように。幼稚園教諭や歯科受付などの、多彩な職業も経験。読者からの共感の声やお悩み相談、体験談が届き、それらも元に執筆中。育児エピソードや義母・夫とのバトルなど、ママ世代から共感を呼ぶリアルな体験記事が人気。

