梅雨だる欠勤で空気一変
私が勤める会社に、新人の田中くん(仮名)が入社して数か月が経った頃のことです。ある梅雨の日の朝、出社しても田中くんの姿が見当たりませんでした。すると、会社のグループLINEに「梅雨だるで体調悪いので休みます」と連絡が入ったのです。
「梅雨だる」という言葉は耳にしたことがありましたが、職場での欠勤連絡として目にしたのは初めてでした。私は少し気になりながらチャット画面を開いたまま様子を見ていると、すぐにその場にいた部長が返信を打ち始めたのです。
止まらない部長の説教
部長のLINEは「社会人なんだからその程度で休むな」「梅雨だる? 甘えるな」と次々に送られてきます。私も含め、ほかの社員も何も返信できないまま、そのLINEを見つめるしかありませんでした。
途中で田中くんは「頭痛と吐き気がひどく、起き上がれません」と追加で説明しましたが、部長は「最近の若者はすぐ理由をつける」とさらに追撃。欠勤連絡だったはずのやり取りは、いつの間にか説教の場のような空気になってしまったのです。
空気を変えた同僚のひと言
部長はグループLINEでのやり取りを終えた後も、納得できない様子でぶつぶつと不満を漏らしていました。そんな様子を見て、同僚の山本さん(仮名)が静かに口を開き「部長、先週“低気圧で頭痛い”って3回早退してましたよね?」と声を上げたのです。
部長は一瞬驚いたような表情を見せましたが「あれは本当に体調が悪かったんだ」と慌てて返しました。しかし、山本さんに続いて別の社員からも「私も気圧で偏頭痛出ます」「天気で体調悪くなるのは起こり得ると思います」と声が上がり始め、さすがの部長もそれ以上は何も言えなくなったようで、バツが悪そうに部屋を出ていきました。
翌日の通達
そして翌日、思いもしないことが起こったのです。なんと、朝の社内ミーティングで「体調不良のときは、みんな無理せず相談するように」と通達がありました。
それだけでなく、会議が終わった後、部長は田中くんの席に立ち寄り、「体調はもう大丈夫なのか」と声をかけていたのです。田中くんも「変な言い方してすみませんでした。頭痛と吐き気がひどかったです」と頭を下げていました。
田中くんがデスクに戻ってくると、「“梅雨だる”だけだとサボりに聞こえる人もいるから、症状をちゃんと伝えるのも大事だからね」と山本さんはさりげなくフォロー。いつの間にかオフィスにもいつもの穏やかな空気が戻っていました。
「伝え方」と「受け取り方」のどちらも大切なのだと、社員みんなが改めて考えるきっかけになった出来事でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:逢坂 ゆな
ライター業をしながら、実は現役の保育士でもある。その実体験を元にしたエピソードをSNS発信すると好評を得て、執筆者としても活躍するように。幼稚園教諭や歯科受付などの、多彩な職業も経験。読者からの共感の声やお悩み相談、体験談が届き、それらも元に執筆中。育児エピソードや義母・夫とのバトルなど、ママ世代から共感を呼ぶリアルな体験記事が人気。

