今回は、近所に住む美紀さん(仮名)から聞いた話をご紹介します。子どもが同じ幼稚園に通っていると、自然と始まるママ友付き合い。その中には気が合う人もいれば、少し距離感に悩む相手もいますよね。美紀さんも、あるママ友との会話にモヤモヤを抱えていたそうです。
少しずつ増えていった“引っかかる言葉”
子どもが幼稚園に入ってから、私は近所のママたちと話す機会が増えました。その中でも、「少し苦手だな……」と感じていたのが明子さん(仮名)でした。会うたびに、「うちの夫、大手IT企業だから毎日遅くて〜」そんな話から始まるのです。
最初は普通に聞いていました。けれど、だんだんこちらの家庭の話に触れてくるようになりました。「フリーランスって、収入不安定なイメージあるよね?」「家で仕事してると、オンオフ切り替えにくくない?」笑顔ではあるのですが、どこか上から見られている感じがして、少し疲れてしまっていました。
うちの夫は、在宅で働くフリーランスのエンジニアです。子どもの送り迎えも自然にしてくれるし、夕飯づくりを手伝ってくれる日もあります。私は今の生活に不満はなかったのですが、明子さんはなぜか毎回張り合ってくるのでした。
食事会での予想外の空気
ある日、幼稚園のイベント後に保護者同士の食事会が開かれました。その日は珍しく、旦那さんたちも参加する流れになり、夫も軽い気持ちで顔を出しました。すると、席についた瞬間でした。明子さんの旦那さんが、急に夫を見て固まったのです。
「あれ……?」次の瞬間、驚いたように立ち上がりました。「佐藤さん(仮名)ですよね!?」その場にいた全員が、一気に静かになりました。私は状況が分からず、「知り合い?」と聞くことしかできませんでした。
知らなかった夫の過去
話を聞くと、明子さんの旦那さんは、昔、夫と同じ会社で働いていたそうなのです。しかも、新人時代の教育担当が、うちの夫だったとのこと。「めちゃくちゃ仕事できる先輩で有名だったんです!」
そう熱量たっぷりに話し始めて、私は逆に驚いてしまいました。夫は少し照れた顔で、「いや、かなり前の話だよ」と苦笑い。
さらに、「会社が嫌だったわけじゃなくて、自分のペースで開発したかったから独立しただけ」と、さらっと言ったのです。その瞬間、それまで強気だった明子さんが静かになったのを覚えています。
肩書きだけでは見えないもの
食事会の帰り際、明子さんが小さな声で、「今まで変なこと言ってごめんね」と謝ってくれました。
あまりにも素直だったので、こちらのほうが逆に気まずくなってしまったほどです。それからというもの、明子さんは他のママ友に対しても、以前のようなマウントのような話をしなくなりました。
帰宅後、私は夫に「もっと早く言ってくれればよかったのに」と笑いながら言ったのですが、「別に肩書きで付き合うわけじゃないしね」と、いつもの調子で返されました。その言葉を聞いた時、肩書きや会社名だけでは、その人の本当の姿なんて分からないのだなと、しみじみ感じたのでした。
【体験者:30代・主婦、回答時期:2026年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:佐藤 栄祠
大手メーカーの営業を経て、ライターに転身。会社員時代に培った経験と、組織の一員であるからこその“喜怒哀楽”をリアルに伝え、「誰かを癒したい」との思いが執筆の原動力。スピリチュアル関連情報にも精通しており、それらに傾倒する人の思いを描いたエピソードも好評。

