優秀さが仇となった、突然の仕事剥奪
「君の代わりなんていくらでもいる」以前の上司から「君がいて助かる」と評価されていた私にとって、新しく赴任した50代の上司から言われたその言葉は、あまりに衝撃的でした。
きっかけは、上司の強引な計画に対して、私がリスク面から冷静に意見したこと。プライドの高い上司は、部下の私に非を指摘されたと感じたのでしょう。それ以来、私のデスクからは、これまで任されていた重要な契約管理やプロジェクトの資料が、一枚、また一枚と消えていきました。
「君はそこに座って、窓の外でも眺めていればいい。それが今の君の仕事だよ」 周囲に聞こえるように放たれた屈辱的な言葉。私は、職場での居場所を完全に失いました。
精神を削る「社内ニート」の地獄
私は何度も「私にできる仕事をください」と頭を下げました。しかし、上司はスマホをいじりながら「任せる仕事なんてない。暇で羨ましいよ」と鼻で笑うばかり。同僚たちも、上司の機嫌を損ねるのを恐れて、私と目を合わせることすら避けるようになりました。
一日中、何もすることがないデスクに座り、パソコンの画面を眺め続ける苦痛。優秀でありたいと願うほど、「自分は不要な人間なのだ」という思いが頭を支配し、精神は限界に達していました。
「明日こそ、辞職願を出そう」 そう心に決めていた、その時です。
シュレッダーしてと渡された、数億円の爆弾
ある日の夕方、上司が「不要な案件」として放置していた資料の山を私のデスクに叩きつけました。 「暇なんだろ? これくらいはやってよ。全部シュレッダーしておいて」
虚しさを堪えて作業を始めたとき、ある一枚の書類で指が止まりました。それは、上司が見落としていた「数億円規模の契約更新」に関する重要書類。しかも回答期限は翌日に迫っており、破棄すれば会社にとって致命的な損失になる代物でした。
私は直感しました。これを上司に渡しても隠蔽される。会社を守るために、私は翌朝、その書類を持って直接役員室のドアを叩きました。「シュレッダーの指示を受けましたが、内容が看過できません」
逆転の役員報告と、上司の末路
役員会は騒然となり、調査の結果、上司のハラスメントと職務怠慢がすべて明るみに出ました。上司は即座に更迭。反対に、冷静な判断で危機を救った私は、本来のスキルを正当に評価され、現場への復職を果たすことができたのです。
後日、荷物をまとめて去る上司が「仕事を奪われることが、これほど辛いことだとは思わなかった」と漏らしていたと聞きました。
私に「窓の外を見ろ」と言った彼が、今度はその窓の外から、こちらを眺める立場になったのです。私は、新しく任された仕事に向き合うべく、力強くキーボードを叩き始めました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:北山 奈緒
企業で経理・総務として勤務。育休をきっかけに、女性のライフステージと社会生活のバランスに興味関心を持ち、ライター活動を開始。スポーツ、育児、ライフスタイルが得意テーマ。

