夏休みに子どもたちで肝試し
私がまだ小学生だった頃の話です。夏休みを迎え、弟が友達5〜6人で肝試しをすることになりました。場所は近所にある古い墓地。日頃はほとんど人が通らず、周囲を木に囲まれていて昼間でもどこか薄暗いような場所でした。
墓石と気づかず踏みつけてしまい……
夜になってみんなが集まると、懐中電灯ひとつで、街灯もない暗闇を奥へと進んでいきました。弟は強がりな性格で、「全然怖くない」と言いながら先頭を歩いていました。
その墓地には整った墓石だけでなく、一見普通の岩のように見えるような古い墓石も多くありました。暗さのせいもあって、墓石なのかただの岩なのかほとんど見分けがつかなかったと言います。弟はそのうちのひとつを気付かずに踏みつけてしまいました。
他の子が後から気づいて注意をしましたが、弟は「大丈夫、大丈夫」と笑い飛ばし、その時は特に何も起こりませんでした。
体に起きた異変
ところが肝試しから数日後、弟に異変が起こります。突然の高熱にうなされたのです。ただの風邪にしては様子がおかしく、1週間たっても熱は下がりませんでした。さらに夜になると「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝り続けるのです。
ただごとではないと思った母は、肝試しのことを一緒に行った友達から聞き出し、すぐに墓場へと向かいました。踏みつけてしまった墓石の前で手を合わせ、何度も何度も頭を下げたと言います。
覚えていなかった肝試し
母が家に帰ってくると、どういったわけか、弟の熱はあっという間に下がりました。あれだけうなされていたのが嘘のように、みるみるうちに元気を取り戻したのです。
母が涙目で「肝試しなんか2度と行ったらダメよ」と言うと、弟は「何のこと? 」と、なんと肝試しのことを覚えていませんでした。それ以来、母は夏休みの時期を迎える度に言います。「知らない墓場には無闇に入るな」と。
【体験者:70代・主婦、回答時期:2016年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:小橋美月
マスコミ業界に16年勤務。業界で培った原稿執筆のスキルを活かし、ライター業へ。さまざまな職種、ライフスタイルの人への取材を通じた、「生きたエピソード」が強み。働く女性の葛藤や子育て、夫婦関係など、実体験に基づいたリアルな物語を届ける。

