映画のレイトショーをご覧になったことはありますか? 通常よりも遅い時間に上映されるため、チケット代が少し安く、夜ならではの非日常感を味わえるのが魅力です。私の友人もその雰囲気に惹かれ、レイトショーにすっかり夢中になっていたのですが……今回は、その体験談をご紹介します。
終電後の夜
私は終電を逃した時、レイトショーを観るのが趣味です。その日も会社の飲み会で終電を逃し、いつものように映画館へ向かいました。観たい作品を選ぶというよりは、都合の良い時間のものを選ぶのが私のスタイルでした。
上映開始
座席に着くと予告の上映が始まりました。私は昼間に映画を見ることも好きなので、気になった映画のタイトルや上映日程を紙にメモしておく習慣があります。暗闇の中、ボールペンでタイトルを書き留めているうちに本編が始まりました。
ところが、選んだはずのアクション映画はいつまで経っても始まらず、無言の男女が登場する恋愛映画のような内容が続いたのです。「違うシアターに入ってしまったのかも」と思い腰を上げた瞬間。前の席に座っていた観客全員が一斉に振り向きました。
不気味な内容とともに
驚いて座り直した私は、レイトショーにこんな満員の観客がいるのを見たことがないと気づきました。上映直前まで私しかいなかったはずなのに。
さらに急に体が動かなくなり、映画の内容も不気味さを増していきます。森の奥へ進む見知らぬ俳優たちを見ながら「これは危ない」と直感した瞬間、スマホのバイブ音が鳴り響きました。機内モードにしていたはずなのに着信があり、画面には母の名前。
先ほどまで動かなかった体が動き、慌ててロビーに出て電話に出る私。母は「あんたが映画館で首を絞められている夢を見て、あまりにリアルだったから電話したの」と言います。私が震えながら今の状況を伝えると、母は「お兄ちゃんに迎えに行くように言うから!」と答えてくれました。
謎の映画
恐怖で振り向くこともできずに立ち尽くしていると、たまたま近くで飲んでいた兄がすぐに駆けつけてくれました。兄がスタッフに上映内容を伝えると「そんな映画はやっていない」と。不審に思った兄は私がいたシアターを確認してくれましたが、そこでは数名がアクション映画を観ているだけだったのです。
その夜は兄とともにタクシーで実家へ帰りました。翌日、広告をメモした紙を見ると無数の〇がぐるぐると書かれていたのです。気味が悪くてすぐに捨てました。それ以来、レイトショーへは行っていません。
あの日の謎の映画、振り向いた満員の観客、メモに残された〇、そして機内モードなのに届いた母からの着信。そのどれもが今も解けないままなのです。
母からの着信で金縛りが解け、無事に帰宅することができましたが、もしあの時着信がなかったらどうなっていたのか――考えるだけで背筋が冷たくなります。不思議な世界への扉は、思いがけない瞬間に開いてしまうのかもしれません。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。

