妊娠中の花粉症
私は妊娠中で、食事など日々の過ごし方にいろいろと気をつけている時期です。我慢しなければならないことも多いですが、その中でも何より大変なのが『薬』のこと。風邪をひいても、頭が痛くても、これまでのように気軽には飲めません。
そんな中で迎えたのが、毎年悩まされている花粉症の季節でした。もともと症状は強い方で、くしゃみや鼻水だけでなく、ひどいと頭痛まで出てしまいます。これまでは処方薬でなんとか抑えていましたが、妊娠中の今回はいつもの薬が使えません。
代わりに処方してもらった薬はあったものの、それが思うように効かず、仕事中も鼻をかみながらの作業です。頭がぼんやりして、集中力も続かないような状態でした。
上司の冗談めかした言葉
そんなある日、私の様子を見た上司の佐野さん(仮名)が、軽い調子でこう言いました。「花粉症くらいで? 気合い気合い〜!」
冗談のつもりだったのだと思います。しんどそうな様子を見て、和ませようとしたのかもしれません。でもそのときの私は言葉を返す気力もなく、(気合いでどうにかなるなら、苦労しないんだけどな……)と心の中で思いながら、苦笑いすることしかできませんでした。
同僚のさりげないフォロー
すると、そのやり取りを聞いていた同僚の近藤さん(仮名)が、やわらかい口調で言いました。「妊娠中って、思うように薬飲めないですしね〜」
そして少し間をおいて、笑いながらこう続けたのです。「……佐野さんが二日酔いのときに飲んでる胃薬も、飲めなかったらつらいでしょ?」その場に、クスッと笑いが起きました。佐野さんは「それは……つらいね」と苦笑いしていて、場の空気がなんとなく和らいだのを感じました。
気持ちを分かってくれた安心感
佐野さんの言葉を強く否定するわけではなく、でもイメージしやすい例できちんと伝えてくれた近藤さん。私はそのやり取りに、少しほっとしたのを覚えています。
妊娠中は、慣れないことや戸惑うことが多くあります。自分から主張するほどではないけれど、なんとなく分かってほしいと思うこともありました。そんなときに、うまく言葉にしてくれる人がいるだけで、こんなにも安心できるのだと感じた出来事でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。

