明らかに異様な動きの男
いつものように駅を歩いていた私は、向こうから一直線にこちらへ向かってくる男性の存在に気づきました。ただ歩いているというよりも、まるでターゲットを定めるかのように視線を向け、スピードを上げて近づいてくるのです。
さらに不自然だったのは、その進路。まっすぐ進めば人を避けられるにもかかわらず、わざわざ女性が歩いている方向へと進路を変え、思いっきり肩をぶつけていきます。
ぶつかられた女性たちはよろけたり、転んでしまったりと、明らかに被害を受けている様子。それでも男性は振り返ることなく、次の“標的”を探すように歩き続けていました。
次の標的は自分だった
嫌な予感がした次の瞬間、その男性は私の目をじっと見据えたまま、さらに勢いをつけて突進してきます。そして、上半身を大きく振りかぶるようにして、体当たり。
交通事故のように勢いよく飛ばされ、荷物があたりに散らばります。怯える顔で私を見上げるのは……おじさんの方。対する私は一歩も動かず、その場に仁王立ちして男性を見下ろしました。
震えながら放った一言
私はゆっくりと男性に近づき、しゃがみ込んで低い声でこう告げます。「おい、なんで女ばっか狙ってぶつかってんだよ? 転んでる人いるだろうがよ。事務所まで一緒に来い」
その言葉に、男性の顔色は一変。先ほどまでの勢いはどこへやら、唇を震わせながら「すいませんでしたっ……」と小さく謝り、そのまま小走りで逃げていきました。
勇気ある行動が空気を変えた瞬間
その後、先ほど転ばされていた女性が私のもとへやってきて、「ありがとうございました」と深く頭を下げてくれました。
それにしても……身長170cm・体重100kgを超える私に対して、なぜあの男性は勝てると思ったのでしょうか。不思議で仕方がありません。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Mio.T
ファッション専攻の後、アパレル接客の道へ。接客指導やメンターも行っていたアパレル時代の経験を、今度は同じように悩む誰かに届けたいとライターに転身。現在は育児と仕事を両立しながら、長年ファッション業界にいた自身のストーリーや、同年代の同業者、仕事と家庭の両立に頑張るママにインタビューしたエピソードを執筆する。

