玄関にあった謎の落書き
ある日、仕事から帰宅した夫が、玄関に入るなり「なんだこれ!」と声を上げました。私も慌てて確認すると、玄関の土間に丸のような落書きがいくつも描かれていたのです。
すぐに娘のみか(仮名・3歳)が描いたものだと分かりました。私は思わず「なんでこんなところに描いたの?」と強い口調で叱ってしまいました。
泣きながら語った意外な理由
叱られたみかは、うつむいたまま何も言いませんでした。夫が「ちゃんと理由を言いなさい」と、少しきつい口調で問いかけると、みかは目に涙をため、小さな声で話し始めました。「……ごめんなさい。パパがお靴そろえてなかったから、幼稚園と同じマーク描いたの」
思わず「え?」と聞き返す夫。しかし、みかはそのまま泣き崩れて寝てしまい、それ以上の話は聞けませんでした。そして翌日、私は幼稚園の先生から、思いもよらない話を聞くことになるのです。
親が知らなかった園での取り組み
翌日、私はみかの担任の先生にそれとなく話を聞いてみました。「今、靴をそろえる習慣づけのために、靴箱の中に足形のマークを描いて、その中に靴を入れる練習をしているんですよ」
その言葉を聞いた瞬間、前日の出来事が一気につながりました。いつも靴をそろえない父親の姿を見ていたみかは、園で学んだことを家でも実践しようとしていたのです。
小さな優しさが教えてくれたこと
夫にも一連の出来事を話すと、夫はすぐに「パパが悪かった。ごめんな」と泣きながら謝りました。私も、ただのいたずらだと決めつけて叱ってしまったことを、みかに謝罪しました。それ以来、夫は玄関で靴をきちんとそろえるようになったのです。
あの小さな丸いマークは、3歳のみかが家族に向けた、精一杯の優しさだったのだと思います。叱ってしまったことを後悔しながらも、子どもの行動をもう少し丁寧に見てあげようと、改めて感じた出来事でした。
【体験者:30代・主婦、回答時期:2020年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Yuina.T
ライター業をしながら、実は現役の保育士でもある。その実体験を元にしたエピソードをSNS発信すると好評を得て、執筆者としても活躍するように。幼稚園教諭や歯科受付などの、多彩な職業も経験。読者からの共感の声やお悩み相談、体験談が届き、それらも元に執筆中。育児エピソードや義母・夫とのバトルなど、ママ世代から共感を呼ぶリアルな体験記事が人気。

