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巷には多彩なコンセプトを掲げる飲食店が数多くあります。和の趣を取り入れたカフェや、漁港を思わせる居酒屋など、どのお店にも独自のモチーフや雰囲気があるものです。その中でも、昭和レトロをテーマにした居酒屋は近年よく目にするようになりました。今回は、そんな飲食店にまつわる、私の友人の体験談をご紹介します。

夏祭り風居酒屋

夏のある日、私はママ友と子どもを連れて居酒屋へ。その店は昭和の夏祭りをコンセプトにしていて、壁には屋台を思わせるお面が並び、子どもにはくじ引きや昔ながらのコマや笛が用意されていました。懐かしい雰囲気に包まれながら、親子で楽しい時間を過ごしていたのです。

渡されたけん玉

私がトイレの場所を尋ねると、店員から「外の共用トイレを使ってください」と案内されました。指示通りに外で用を済ませ、戻る途中のこと。店員らしき人から「どうぞ」とけん玉を手渡されたのです。お店のサービスなのだろうと思い、ありがたく受け取ることに。そして席に戻り、歓談を再開しました。

ところが会計の際、バッグに入れたはずのけん玉が見当たりません。子供たちがぐずり出し、探す余裕のないまま帰宅。玄関にポツンと置かれていたけん玉を見つけたのは、子どもを寝かしつけた後のことでした。

「もしもし亀よ」

翌日、息子が高熱を出し急いで病院へ。帰宅後、私がうたた寝から目を覚ますと、息子はベッドの上でけん玉をしながら「もしもし亀よ」を歌っていました。3歳の息子が今まで見たことも触れたこともないけん玉を使いこなすはずもないのに、見事な技を披露していたのです。

私は直感的に「歌を最後まで歌わせてはいけない」と感じ、慌ててけん玉を取り上げました。しかし息子はうつろな目をしたまま。私が呼びかけても返事をしない。私は急いで看護師の姉に電話かけました。

救急車を呼ぶべきか指示を仰ごうとする私に対し、「今、泣いているのは〇〇(息子)?」と姉。しかし息子は泣いていません。姉には受話器越しに子供の泣き声が聞こえているというのです。姉は異変を察知し、すぐに車で駆けつけてくれました。

しばらくして息子の体調は落ち着いたものの、私はけん玉が原因なのではと思い、返却しようと居酒屋へ向かいました。

存在しないサービス

居酒屋にけん玉を返そうとしたものの、「けん玉を配るサービスはしていません」と店長。さらに「共用トイレも存在しない。トイレは店内にございますよ」と笑顔で返されました。

私は酔っていたせいなのかな、と自分を納得させようとしましたが、息子の高熱や不思議なけん玉さばきは現実に起きたことです。けん玉は店のインテリアとして受け取ってもらえ、ようやく私の手元から離れました。

帰宅すると息子の熱は下がっており、いつもの元気な笑顔を見せてくれたのです。その後も体調を崩すことなく過ごしています。あの日の出来事は今も謎のままですが、もし歌を最後まで歌わせていたら――そう考えるたびに背筋がひやりとするのです。

そして居酒屋は程なくして閉店。原因はあのけん玉にあるのか、それとも偶然なのでしょうか……。

【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2026年3月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。

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