逆子と分かった妊娠後期
私が第一子を妊娠していた頃のことです。出産を心待ちにしていましたが、妊娠後期の健診でお腹の赤ちゃんが『逆子』だと分かりました。先生から説明を受け、最終的には計画帝王切開で出産することに。
予定していた出産の形とは違っていましたが、無事に生まれてきてくれるならそれが一番です。そうは言っても、手術の日が近づくにつれてやはり怖さはありました。お腹を切るという言葉の重みを考えるたびに、緊張で落ち着かなくなります。
手術が終わったあと
予定通り手術は無事に終わり、赤ちゃんは元気に生まれました。本当にほっとしましたが、私はまだベッドの上。お腹の傷はじんわりと痛み、身体も思うように動きません。
そんな中、夫と義母が面会にやって来ました。赤ちゃんの顔を見た夫は、安心したように笑いながらこう言いました。「でもまぁ、帝王切開だから陣痛なくてよかったね!」
義母の叱責
その言葉を聞いた瞬間、隣にいた義母の顔色がさっと変わりました。そしてすぐに、「なに言ってんの!」と夫を一喝したのです。驚く夫に向かって、義母は続けました。「お腹を切るなんて、覚悟がいることなのよ!」「陣痛がない代わりに、手術台に上がる覚悟してるの!」
さらに、夫が何か言う前に、畳み掛けるように言いました。「あんたなんて、昔からちょっと指切っただけで大騒ぎなのにね……」夫は言葉を失って、「……ごめん」と小さくつぶやき、そのまま黙り込んでいます。
さっきまで夫から漂っていた「よかったね」という軽い空気は、その場からすっかり消えていました。
忘れられないひとこと
そのあと義母は、ベッドの上の私のほうを向いて「本当によく頑張ったね」と優しく声をかけてくれました。その言葉を聞いたとき、私は思わず胸がいっぱいになりました。
出産の方法がどうであっても、赤ちゃんが無事に生まれてくるまでには、それぞれの大変さや覚悟があります。私は義母がはっきりと言ってくれた言葉に救われました。あの日の出来事は、今でも忘れられない大切な記憶として、私の中に残っています。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。

