楽しみに選んだ一着
私が第一子を妊娠していた頃のことです。ネットで赤ちゃんグッズや洋服を見て、どれにするか考える時間が、私にとって毎日のちょっとした楽しみでした。お腹の子が女の子だと分かってからは、ピンクや黄色の可愛らしい服を少しずつ揃えるようになり、気持ちも明るくなっていきました。
中でも特に楽しみにしていたのが、退院の日に着せるセレモニードレスです。いくつも見比べて、ようやく「これだ!」と思える一着を見つけました。出産の日を思い浮かべながら、そのドレスを着たわが子に会えるのを心待ちにしていました。
義母から届いたメッセージ
そんなある日、義母からメッセージが届きました。「かわいいセレモニードレス見つけたから買っといたよ!」思いがけない内容に、私はとても戸惑ってしまいました。(どうしよう……着せたいドレスがあったのに……)
自分で選んだドレスを着せるのを楽しみにしていた気持ちと、せっかく用意してくれたものを無下にできない気持ちが、頭の中でぐるぐるしています。うまく整理できないまま、気持ちだけが落ち着かなくなっていきました。
空気を変えた夫の一言
そのことを、私は夫にそれとなく話してみました。すると夫は少し考えるように黙り込んだあと、その場で義母に電話をかけてくれたのです。
そして電話口で夫は、落ち着いた声でこう伝えていました。「楽しみにしてくれるのはありがたいけどさ」「やっぱり、子どもの『初めて』のことは親である俺たちで決めたいから」
みんなの気持ちを大事に
義母も悪気があったわけではなく、「ごめんね、つい嬉しくて」と素直に反省してくれたそうです。結局、義母が用意してくれたセレモニードレスは、退院の日ではなく赤ちゃんを連れて初めて義実家を訪ねる日に着せることになりました。私は自分で選んだドレスも着せることができて、義母の気持ちも無駄にならずに済み、ほっとしました。
お腹の子の誕生を楽しみにしているのは、親だけではありません。でも、親である私たちが『最初』に決めたいこともやっぱりあります。夫が間に入ってくれたことで、それぞれの気持ちを大切にしながら、みんなが気持ちよくその日を迎えられるかたちになりました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。

