管理栄養士としての食卓
私は管理栄養士の資格を持っていて、料理をするのも好きです。結婚したばかりの頃は、毎日の食卓にもかなり気合いを入れていました。
一汁三菜を基本に、主菜は魚や肉を日替わりでバランスよく。栄養のことを考えながら、彩りも整えて『健康的なごはん』を意識していました。管理栄養士としての知識を、日々の食卓でも活かしたいと思っていたのです。
「茶色いおかずが好き」発言
そんなある日の夕食のことでした。食事をしていた夫の翔太(仮名)が、ふと箸を止めて言ったのです。「美月の作るごはんって、野菜多くない?」「俺、茶色いおかずが好きなんだよな〜」
唐揚げ、ハンバーグ、カレーなど……夫の理想は、いわば『茶色の世界』です。たしかにおいしいですし、私も好きなメニューです。ガッツリ食べたい気持ちも分かります。でも、それだけを食べ続けていいわけではありません。
いろいろ考えて作っているだけに、私は夫の言葉に少しがっかりしました。それでも「そうなんだね〜。翔太の好きなもの、全部茶色だもんね」と笑って流し、変わらず野菜料理も食卓に並べ続ける日々でした。
夫の健康診断結果
それから数か月後のことです。会社から健康診断の結果が返ってきたらしい夫が、なにやら上機嫌で帰宅しました。「なんか血液検査の数値、良くなってた!」「前よりコレステロール下がってたわ!」と満足げに結果を見せてきます。
その話を聞いて、私は思わず言いました。「へぇ〜。それってさ……野菜たくさん食べてるおかげかもね?」すると夫は、ピタッと動きを止めて少し考える様子に。そして「……そうかも」と、小さくつぶやきました。
日々の努力が報われた瞬間
その瞬間、私は心の中でガッツポーズです。管理栄養士として積み重ねてきた知識と、毎日の食卓での小さな工夫が、ちゃんと『数字』になって返ってきたような気がしたからです。夫はきっと、そこまで深く考えてはいないと思います。でも、私にとってはそれで十分でした。
『茶色の世界』も悪くありません。でも、その中に『緑』を混ぜ続けてきた自分を、少しだけ誇らしく思えた出来事でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。

