昼休みに繰り返される“いつもの愚痴”
私は3児の母で会社員です。職場に、よく「嫁が飯作らねえ」と愚痴る同僚がいました。昼休みになると「冷凍ばっか」「やる気なさすぎ」と笑いながら話すのが恒例で、周囲も苦笑いしながら聞いている状態でした。
私は最初、よくある夫婦の軽い愚痴だと思い、特に何も言わず聞き流していました。
「つわりとか言って動かねえんだよ」の一言
ある日、彼はさらにこう続けました。「今、妊娠中なんだけど、つわりとか言って全然動かねえんだよ」。その瞬間、私は言葉を失いました。妊娠中で、つわりがある。それを“サボり”のように職場でネタにしていることに強い違和感を覚えたのです。
私は3回の妊娠を経験しています。立っているだけでつらい日もあったし、匂いで吐き気が止まらない日もありました。気づけば私は口を開いていました。
思わず口にした一言
「ご飯は、嫁が作るなんて決まっていませんよ」。その言葉に、周囲の空気が一瞬止まりました。彼は戸惑いながら「いや、分かってるけどね……でもさ、俺も仕事してるし……」と返しました。私は続けました。
「奥さんは今、お腹の中で命を育ててますよ。仕事と比べる話じゃないです」。冗談の空気は完全に消え、彼はしばらく黙ったあと「……まあ、そうだよな」と小さくつぶやきました。
当たり前を疑うということ
その日以降、「嫁が飯作らねえ」という愚痴は聞かなくなりました。後日、彼は少し照れくさそうに「最近は俺が作ってる」と話していました。
“分かってるけど”の後に続く言い訳は、誰かが止めなければ当たり前のように流れてしまいます。家事は役割ではなく選択です。あのとき声をあげたことで、私自身も「当たり前」を疑う大切さを改めて実感しました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:北山 奈緒
企業で経理・総務として勤務。育休をきっかけに、女性のライフステージと社会生活のバランスに興味関心を持ち、ライター活動を開始。スポーツ、育児、ライフスタイルが得意テーマ。

