祖父リクエストのおつかい
結婚してからずっと、私は夫の実家で生活しています。義両親たちとも良好な関係で、基本的には居心地のいい同居生活です。しかし、夫の祖父(70代男性)から頼まれるおつかいには、少し困ったところがありました。
購入店の指定
祖父は、某コンビニチェーン店で売っている、とある菓子パンが大好きです。朝食やおやつによく食べていました。祖父は私によく、そのパンの買い出しを任せてくれます。
おつかいそのものは、嫌ではありません。気持ちよく引き受けるのですが「必ず、△店で買ってほしい」と、なぜか店舗の指定までしてくるのです。
指定されている△店までは、車で約20分。一方で最寄りの系列店なら、家から5分のところにあります。「同じコンビニだからそっちで買いますね」と伝えても、「△店がいい」の一点張り。物腰は柔らかかったですが、購入レシートまで確認する徹底ぶりでした。
思い込みという勘違い
なんと祖父は、コンビニのパンは普通のパン屋と同じように、店内で焼き上げていると思い込んでいたのです。
確かに店内製造のパンも存在しますが、彼が愛してやまない菓子パンは、明らかに工場で作られたもの。何度も説明しましたが、「やっぱり、△店のパンが一番美味しい」という意見は変わりませんでした。
実際に食べ比べてみる
そこで、3店舗分の同じパンを買いそろえ、クイズ形式で食べ比べてもらうことに。3つのパンを味見した祖父は、眉をひそめてしばらく考え込みます。最後はヤケ気味に答えを選びましたが、結果は不正解でした。
この時やっと、どこの店舗で買っても味が変わらないことを理解してもらえたのです。
どこでも手に入る安心感
これ以降、祖父はパンの購入場所を指定してこなくなりました。それどころか、どこでも自分のお気に入りが手に入ると分かり、心なしか嬉しそうにも見えます。私自身も、パンのおつかいがずいぶん気楽になりました。
「言葉でだめなら、舌に訴えてみる作戦」、無事成功です。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2023年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:S.Takechi
調剤薬局に10年以上勤務。また小売業での接客職も経験。それらを通じて、多くの人の喜怒哀楽に触れ、そのコラム執筆からライター活動をスタート。現在は、様々な市井の人にインタビューし、情報を収集。リアルな実体験をもとにしたコラムを執筆中。

