よくあるはずの接客現場
大学時代、カフェでアルバイトをしていた頃の話です。日常的にさまざまなオーダーや要望を受ける、いわゆるよくある接客現場でした。
ある冬の寒い日、30代後半くらいの女性が来店し、テイクアウトでホットのカフェラテを注文しました。その際、「熱めに作ってください」と依頼されました。
予想外の再来店
「熱め」指定は決して珍しくなく、こちらも特に違和感はありませんでした。ドリンク担当が通常よりしっかり温度を上げて提供すると、女性は「ありがとう」と丁寧にお礼を言い、店を出ていきました。その態度から、特別なトラブルの予感はまったくありませんでした。
しかしほどなくして再来店。「熱すぎて飲めないので、少し冷ましてください」と申し訳なさそうに頼まれました。
終わらない温度調整
小さめの氷を入れて冷ます提案をし、了承を得たうえで対応。女性が去った後、店員同士で「熱くしすぎたかもしれないね」と話していました。
ところが彼女は再び戻ってきて、「ぬるすぎるので、最初と同じくらい熱めにしてほしい」と言いました。最初同じだと熱すぎないかと念のため確認しても、「外がとても寒いのでやっぱり熱いほうがいい」とのこと。再度しっかり温めて渡し、今度こそ終わりだろうと全員が思っていました。
見えていなかった事情
しかし数分後、また同じ女性が戻ってきました。「やっぱり熱すぎるので、冷ましてほしい」というデジャブのような展開です。冷ましている間、彼女は恥ずかしそうに、「冷え性で手足が冷たくて寒がりなのに猫舌なんです……温まりたいのに飲めなくて、何度もすみません」と打ち明けてくれました。
何度も往復した理由が、ようやく腑に落ちた瞬間でした。それはわがままではなく、体質と状況が生んだ矛盾だったのです。人の注文には、見えない事情が隠れていることを再認識させられた出来事でした。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2026年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。

