初めての男性育休の相談
私の会社で、初めて男性社員が育休を取りたいと申し出たときのことです。その男性社員は、第1子が生まれるタイミングで育休の取得を希望していました。期間は1か月間で、決して長いものではありません。
出産後すぐは、奥さんと赤ちゃんが実家に戻る予定でしたが、1か月ほど経ってから自宅に戻ってくるため、そのタイミングに合わせて育休を取りたい、という理由でした。家族3人での生活が始まる時期を、きちんと支えたい。とても自然で、現実的な考えだと感じました。
公の場でのやり取り
育休の相談は、会議室などではなく、普段仕事をしているフロアで行われていました。周囲には他の社員もいて、会話の内容は自然と多くの人の耳に入る状況でした。上司も特に場所を変えることなく、その場で話を聞いていました。
そして話を一通り聞いたあと、上司はこう口にしました。「子ども1人で、お前も休んで何するん?」その瞬間、フロアの空気が一気に静まり返りました。
凍りついた空気と、あとからの気づき
近くで聞いていた社員たちは、誰も声を出しませんでしたが、「え?」「その言い方はまずいよね……」そんな戸惑いが、空気の中に広がっているのが分かりました。
男性社員は驚いた表情で、しばらく言葉が出ない様子でした。たった1か月の育休を希望しただけなのに、公の場で必要性そのものを問われるような言い方だったからです。その場では大きな反論も起きず、気まずい空気のまま話は終わりました。
ただ、後になって上司自身も「言い方が良くなかったかもしれない」と感じたようでした。同じ場にいた人事担当者から、上司ははっきりと注意を受けたと聞いています。
少しずつ変わっていくために
最終的に、上司は男性社員に対して謝罪をし、男性社員は希望していた1か月の育休を無事に取得できることになりました。
周囲の社員たちは、「声を挙げるだけでも勇気が必要だっただろうな」と話していました。同時に、「こういう出来事をきっかけに、少しずつ変わっていくのかもしれない」とも感じていました。
制度があっても、受け止める側の意識や言葉が追いついていないと、誰かを傷つけてしまうことがある。何気ない一言が、公の場では想像以上に重く響くのだと、改めて考えさせられた出来事でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年4月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:北山 奈緒
企業で経理・総務として勤務。育休をきっかけに、女性のライフステージと社会生活のバランスに興味関心を持ち、ライター活動を開始。スポーツ、育児、ライフスタイルが得意テーマ。

