「君の瞳に乾杯」や「僕(私)たちが結ばれるのは運命なんだ」。現実世界ではほとんど耳にすることはないけれど、恋愛ドラマや漫画でのベタすぎるセリフ。まさか私の人生で実際に使う日が来るとは、思ってもいませんでした。
旅先での怪我
先日、家族旅行に出かけた際、思いもよらぬ出来事が起こりました。息子が太ももをケガしてしまい、救急病院へ。幸い手術までは不要でしたが、歩くと強い痛みがあり、数日間はできるだけ足を動かさないようにとの診断。そこで急遽、5歳の息子のためにベビーカーを購入することにしました。
好奇の目
5歳児がベビーカーに乗る姿は、周囲から少し異様に映ったようで、周囲からは好奇の視線。しかし車いすを使うほどの大けがではなく、旅先で安静に移動するにはベビーカーしか選択肢がありません。私はできるだけ息子を休ませようと、スーパーで食料を買い込みホテルで過ごす準備をしました。
ところが帰宅のためタクシー乗り場へ行くには、急な階段が。大量の食材と爆睡する息子を前に、どうやって下まで下りるか頭を抱えました。
口論
階段の上で立ち尽くしていると、突然外国人女性が私に向かって何かを話しかけてきました。言葉は理解できませんでしたが、怒っていることだけは伝わってきます。どうやら彼女は私ではなく、後ろにいた外国人男性に対して「この人たちを手伝ってあげなさい」と訴えている様子。
男性は「なぜ俺が!」と反論しているようで、二人の口論はどんどんエスカレート。私や息子を指さしながら言い合う姿を見て、言葉は分からなくても意味は理解できました。
そして私は人生で初めて、ドラマでしか聞いたことのないセリフを叫んだのです。「私のために争わないで!」と。もちろん日本語だったため、二人には通じませんでしたが。
助けの手
そのとき、見ず知らずの外国人家族が現れました。父親らしき人が息子をベビーカーごと抱えて階段を下りてくれ、母親らしき人が私の荷物を半分持って下りてくれたのです。私は感謝の言葉を伝え、ふと階段上を見上げると、先ほどの口論はすでに終わっていました。
旅先で息子が大けがをすることも、5歳になってベビーカーを買うことも予想していませんでした。が、一番驚いたのは、恋愛ドラマでしか耳にしたことのないあのセリフを自分の口から発する日が来たこと。
人生は本当に予測不能で、だからこそ忘れられない瞬間が生まれるのだと感じました。そしてドラマティックなセリフは現実世界にも有効なのだと、身をもって知ったのです。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2026年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:桜井ひなの
大学卒業後、金融機関に勤務した後は、結婚を機にアメリカに移住。ベビーシッター、ペットシッター、日本語講師、ワックス脱毛サロンなど主に接客領域で多用な仕事を経験。現地での出産・育児を経て現在は三児の母として育児に奮闘しながら、執筆活動を行う。海外での仕事、出産、育児の体験。様々な文化・価値観が交錯する米国での経験を糧に、今を生きる女性へのアドバイスとなる記事を執筆中。日本でもサロンに勤務しており、日々接客する中で情報リサーチ中。

