なんでもかんでも割る夫
私の夫は、いわゆる「ガラス割り夫」でした。気に入らないことがあると、身の回りのガラス製品に当たるのです。
年末、宝くじが外れた腹いせに「外れたのはお前のせいだ!」と私に言い放ちながらスマホを窓ガラスに投げつけ、両方を粉々にしました。手を上げてくることはありませんでしたが、とにかくガラスを割ります。
日常化した破壊
別の日には、子どもの夜泣きで起こされたことに腹を立て、「うるさくて眠れない!」とテレビを殴って倒し、液晶を破壊しました。食器が割れるのも日常茶飯事で、お味噌汁がぬるいという理由でテーブルごとひっくり返すこともあります。
何度注意しても返ってくるのは「人には当たってない」「物に当たってるだけ」という言葉。本人の中では、これは暴力ではなくストレス発散なのだそうです。
必死に考えた防止策
ある日、私は悟りました。説教しても直らないなら、被害を減らすしかないと。家中の食器をすべてプラスチック製に変更し、窓には飛散防止フィルムを貼りました。生活空間を静かに“要塞化”していったのです。
そんなある日、夫婦共通の友人が家に遊びに来ました。部屋を見回し、違和感に気づきます。「あれ? テレビ変えた?」食卓を見て、「え、食器全部プラスチック?」最後には窓のフィルムを見て「ここ、ハリケーンでも来たの?」と笑いました。
私は淡々と答えました。「割れるものを、全部割れないものに変えただけ」
突きつけられた現実
友人が帰ったあと、夫は「家族に当たらずに物に当たってるだけマシだと思ってたけど、結局は家族に当たってたのか……ごめん」と小さい声で言いました。それ以降、夫が物に当たることはなくなりました。
反省とは、叱られることではなく、現実を突きつけられることなのかもしれません。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2020年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。

