完全未経験からのスタート
私は完全未経験から調剤薬局事務の仕事を始めました。専門的な知識は一切なし。薬の名前も思いつくのはせいぜい1~2個。文字どおりゼロからのスタートでした。
患者さんに記入してもらったアンケートの情報を、パソコンに入力していた時のことです。薬剤師の方から「患者さんの、この情報も入れといて」と走り書きのメモを渡されることがありました。
謎の単語
そこには「SE歴あり」「DM注意」と書かれています。「SEって……システムエンジニア? 激務と聞くし、病歴に関係あるのかな……?」「DM……ダイレクトメールのこと? セールなんて無いのに薬局が送るの?」
言葉の意味をどれだけ考えても、自分では分かりません。意を決して、疑問に思ったことを薬剤師に聞いてみることにしました。
自分の常識は、相手の非常識
真剣なまなざしで質問する私。しかし、相手の薬剤師はそんな私を見て苦笑い。すぐに優しく単語の意味を教えてくれました。「あのね、SEっていうのは職業じゃなくて副作用(Side Effect)、DMは、糖尿病(Diabetes Mellitus)のことだよ」
それは医療現場で使われる専門用語でした。無知な私は、意味を大きく勘違いしていたのです。精一杯の平静をよそおったものの、恥ずかしさで耳まで真っ赤に。しかしそれと同時に「ちゃんと聞いてよかった……」とも感じました。恥ずかしい思いをしましたが、そのおかげで単語の意味が一発で記憶できたからです。
失敗しながら学んでいく
あれから十数年。今では電話対応などでメモを取る時、医療用語の略語を用いることがあります。そんな自分を「すっかりこの業界に染まったなあ……」と感じることも。
人は失敗しながら学ぶ生き物。若かりし頃の赤っ恥体験は、そんな「ありがたい失敗」だったのかもしれません。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2024年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:S.Takechi
調剤薬局に10年以上勤務。また小売業での接客職も経験。それらを通じて、多くの人の喜怒哀楽に触れ、そのコラム執筆からライター活動をスタート。現在は、様々な市井の人にインタビューし、情報を収集。リアルな実体験をもとにしたコラムを執筆中。

