“きっちりとルールに従う”が抜けない日常
保険会社に勤めていると、日常のあらゆる出来事を「約款(やっかん)」で考えるクセがつきます。約款とは保険のルールブックで、責任範囲や条件が細かく定められたものです。これが頭に染みつくと、物事を感覚で流すのが難しくなります。
仕事柄、契約内容の誤りや説明不足が何億円にもつながる重大トラブルとなるため、「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ」を正確に残す思考が、私生活でも自然と発動してしまいます。
家庭でも事故対応モード
たとえば恋人や夫の帰宅が遅れると、「その2時間はどこにいたの?」と、つい事故対応の聞き取りのようになります。「同僚と飲んでたよ」と言われても、「急に決まったの? 帰路を考慮しても1時間の空白があるよね?」と確認事項があふれ出して止まりません。
相手に悪気がなくても、「次はこうすれば今回みたいな誤解は防げるよ」と再発防止策まで相手に提案してしまい、家に“社内調査担当”が常駐している状態になります。
違和感を見逃せないクセ
友達の「まあいいか~」が理解できないこともあります。「まあいい」が後の事故につながる気がして、小さな違和感も放置できません。
恋人の何気ない一言も、「それ、前と言ってた話と違わない?」と記憶を照合・精査してしまいます。証拠を集めたいわけではなく、不安要素を潰して安心したいだけなのですが、傍から見るとただ細かく理詰めする人に見えてしまいます。
反省と自虐の行き着く先
自分でも「さすがに詰めすぎでは」と気づく瞬間はあります。仕事脳が入りすぎると、家庭まで損害査定モードになり、あとで一人反省会です。理屈で整理するクセは強いですが、排除できるリスクは排除して、安全な生活がしたいだけ。
業界経験者同士だと「それ分かる!」で盛り上がれる一方、業界に関係のない相手からするとただの厳しい事情聴取です。気づけば相手の表情が、保険金請求を却下された時のようになり、申し訳なくなるのもあるあるです。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2023年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:Ryoko.K
大学卒業後、保険会社で営業関係に勤務。その後は、エンタメ業界での就業を経て現在はライターとして活動。保険業界で多くの人と出会った経験、エンタメ業界で触れたユニークな経験などを起点に、現在も当時の人脈からの取材を行いながら職場での人間関係をテーマにコラムを執筆中。

