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毎日の食事は、家族や友人との大切な時間。でも、つい口から出たほんの一言が、思わぬ波紋を呼ぶことも……。今回は、食卓についた夫がこぼした一言が引き起こした、ある日のエピソードを紹介します。

食卓の悲劇

仕事を終えて帰宅した私は、冷蔵庫の中身とにらめっこしながら今日の献立を組み立てました。そこそこ自信を持ってテーブルに並べ、やっと一息ついた瞬間、夫は想像の斜め上をいく一言を発したのです。「ごめん……今日、その気分じゃないんだよね」

夫の要求に振り回される夜

ここまで準備して座った瞬間にそれはないだろうと思い、つい「じゃあ、何なら気分なの?」と聞きました。夫は腕を組んでしばらく考え込み、やっとのことで「うーん……なんか……パンチのあるやつ?」と答えました。

思わず飛び出した私の一言

1日の仕事を終えて、買い物をして、料理をした私の小さな努力と不満が、一気に心の中で点火しました。「じゃあもう自分で作れば?」気づけば口から出てしまっていました。

夫は「えっ……」と固まり、私も「あ、言っちゃった」と思いつつ止まりませんでした。「気分で変わるなら、本人が作ったほうが早いから!」

静かな食卓での小さな和解

その後夫は、気まずさをまといながらも、私の作った夕飯をそっと口に運びました。ひと口噛むと、小さくうなずきながらぽつりと「……やっぱり、今日これの気分だったんだよな」とつぶやきます。表情は固まったままですが、箸だけは義務のように静かに進んでいました。

夫婦げんかのあと、食卓は静かだけれど、空気だけは妙に濃い。日常のちょっとしたやり取りで、疲れと小さな不満がふっと顔を出すこともあります。けれど、食卓の向こうで「やっぱりこれがよかった」とうなずく姿が、ささやかな和解の証なのかもしれません。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年11月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:miki.N
医療事務として7年間勤務。患者さんに日々向き合う中で、今度は言葉で人々を元気づけたいと出版社に転職。悩んでいた時に、ある記事に救われたことをきっかけに、「誰かの心に響く文章を書きたい」とライターの道へ進む。専門分野は、インタビューや旅、食、ファッション。

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