お弁当に細かすぎる夫
夫とふたり暮らしで共働きをしている私は、毎朝夫のお弁当を作るのが日課でした。忙しい朝は時間との戦いですが、できる範囲で工夫しながら続けてきたつもりです。
けれど夫はとにかくリクエストが細かい人でした。「卵焼きは甘いほうがいい」「ご飯は固めで」「肉ばっかりは嫌だな」「彩りがほしい」言っていること自体は分かるけれど、毎日のように注文されると、だんだん心が重くなっていきました。
“同僚のお弁当写真”で圧をかけてくる!?
そんなある日。お昼休みに夫から1枚の写真が送られてきました。写っていたのは、同僚の女性が作ったという彩り豊かで栄養バランスの良さそうなお弁当。続けて届いたメッセージでは、「見てこれ! 俺がいつも言ってるの、こんな感じ!」と。
読んだ瞬間、(いやいや……私だって仕事してるし、毎日の食事もお弁当も準備してるのに。理想を押し付けられても困るよ)と、ずっと我慢してきたモヤモヤが一気に膨らんでいくのを感じました。
穏やかだけど決定的なカウンター
翌朝、夫がいつものように「今日の弁当は?」と何気なく聞いてきたので、私は落ち着いた声で言いました。「これから、お弁当は自分でお願いね」夫は一瞬きょとんとして、「え? なんで急に?」と慌てて聞き返してきました。
私は淡々と、でも丁寧に気持ちを伝えました。「私も仕事してるし、いろいろ言われ続けるのは正直しんどかったよ。あなたの理想のお弁当があるなら、自分のペースで自分で作るほうがいいでしょ?」感情をぶつけたわけではありません。ですが、その言葉は夫にとって予想以上に響いたようでした。夫はしばらく黙り込み、言い返すことができない様子でした。
夫がようやく気づいたこと
その日の夜、夫はぽつりと「ごめん」と口にしました。そして「由佳も仕事があるのに、家のこともお弁当も全部任せてた。俺、言い方も悪かったと思う」と。私は「余裕がないときは言うね。ふたりでできる範囲でやろう」と返しました。責めるつもりはなく、ただお互い無理なく過ごせればそれでいいと思ったからです。
その後、夫がお弁当を作る日が少しずつ増えていきました。感謝の言葉も増え、私がお弁当を作った日には文句を言うこともありません。「自分で作ってみてわかったよ。お弁当って、こんなに時間かかって大変なんだな」その夫の言葉に、私はやっと肩の力が抜けました。
家のことも、お弁当も、妻だからって全部背負う必要はない。私たち夫婦のバランスが整った出来事になりました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2024年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
EPライター:辻 ゆき乃
調剤薬局の管理栄養士として5年間勤務。その経験で出会ったお客や身の回りの女性から得たリアルなエピソードの執筆を得意とする。特に女性のライフステージの変化、接客業に従事する人たちの思いを綴るコラムを中心に活動中。

