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毎朝の通勤電車。ただでさえ憂鬱なこの時間に、さらにストレスをかけてくる「困った乗客」に遭遇したことはありませんか? 私が社会人になりたての頃、毎朝のように満員電車の中で「お説教」をし、周囲を震え上がらせていた女性のエピソードを紹介します。

通勤電車の直立不動の女性

私がまだ社会人になりたての頃の話です。朝の通勤電車で、同じ車両に乗り合わせる中年の女性がいました。 髪をピシッと一つにまとめ、常に背筋をピンと伸ばして直立不動。いかにも「隙がない」厳格なオーラを放っています。

問題は彼女が周囲の人にも「厳格な規律」を求め、車内のだれかれ構わずお説教を始めることでした。その声は遠くからでも聞こえるほどよく通り、私はいつも(今日は何に怒っているんだろう……)と、つい聞き耳を立てていました。

理不尽すぎるマイルール

彼女のお説教は、たいていが理不尽なマイルールを押し付けるものでした。向かい合わせに立つ男性には、「あなた、立つ向きがみんなと反対でしょう! 向こうを向きなさい!」ポニーテールの女子学生には、「髪が顔に当たるから、頭は動かさない!」足がよろめいて、少しでも彼女にもたれ掛かろうものなら「しっかり立つ!」といった具合。

満員電車で揺れれば多少の接触はお互い様。それでも、彼女には妥協という概念がありません。度重なるお説教に、満員電車の車内でも、いつしか彼女の周りだけ空間ができるようになっていました。そのうち誰かが怒ってトラブルにならなければいいのだけれど……。私はそんな心配をしていたのです。

ターゲットになった受験生

ある朝のこと、その日は彼女の目の前で参考書を読んでいた男子学生が標的になりました。「ちょっと!」女性の鋭い声が響きます。「本を読むと背中が後ろに倒れるでしょう! 本を読むのはやめなさい!」

次の瞬間、男子学生は驚くほど落ち着いた声で返したのです。「すみませんが、受験生にとって通学の時間も貴重な勉強時間なので」感情的になるわけでもなく、淡々とした一言が静かな社内に響きました。

完全論破と静かな幕切れ

予想外の返答に、女性は返す言葉が見つからなかったようです。「勉強するな」とは、さすがの彼女も言いづらかったのでしょう。彼女はバツの悪そうな表情を浮かべ、そっと顔をそらしました。

その日を境に、彼女をその車両で見かけることがなくなりました。あの受験生の一言により、私の乗る車両には平和が訪れたのでした。

【体験者:60代・女性会社員、回答時期:2025年11月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

EPライター:Sachiko.G 
コールセンターやホテル、秘書、専門学校講師を歴任。いずれも多くの人と関わる仕事で、その際に出会った人や出来事を起点にライター活動をスタート。現在は働く人へのリサーチをメインフィールドに、働き方に関するコラムを執筆。

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